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電子書籍■人魚(合本): 連作ショートショート

人魚(合本): 連作ショートショート

・内容紹介
「人魚」をテーマにした掌編小説集です。
幻想的な作品から純文学的なものなど、作品ごとに雰囲気が違います。
※本文より
 それはまるで童話の絵本に出てくるような人魚だったのだ。
 光を反射するうろこを持った腰から下の魚の部分と、少女のような、栗色の少しウェーブのかかった長い髪の上半身。手のひらに乗りそうな小さな人魚は水草のあいだからこちらをうかがっていた。
 後から考えてみれば二、三秒のことだったのではないかと思う。自分の目が信じられないと感じながら、人魚の姿を凝視していた。
 水の中からこちらがどのように見えていたのか…わたしの視線を感じたのか、人魚はクルリと体の向きを変えるとスッと水草の間に隠れてしまった。

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電子書籍■連作ショートショート 人魚 04 公園の人魚

連作ショートショート 人魚 04 公園の人魚

・内容紹介
「人魚」をテーマにしたショートショート作品の連作のひとつです。
※本文より
 その公園は、昼間のベンチではお年寄りたちが雑談し、ブランコなどの遊具では小さな子供とその母親たちが遊んでいる風景が見られた。春には公園内の桜並木が花見客たちを集める。また夏場には、ほぼ中央にある池で子供たちが水遊びするのが風物詩のようだった。
 池には、人工的に作られた丘から、これも人工的に作られた小川の水が流れ込むような形に作られ、その里山的な演出は、周囲を住宅やマンションに囲まれている中でちょっとした自然に触れられるような雰囲気があった。
 池の底はタイルが貼られ、中央にタイルのモザイク画で人魚が描かれていた。
 池の水は年に数回抜かれ、公園を管理する職員によって掃除されるが、夏場に子供たちが遊ぶ関係で、そのうちの一回は初夏に行われるのが通例となっていた。今日はその掃除の日だった。
 池の周囲では水遊びができないのを残念がってか、或いは池の掃除が珍しいのか数人の小さな子供と母親たちが職員たちの動きを眺めていた。
「あれ、山下さんお久しぶりです」
 水が抜かれた池の底を柄の長いブラシでこすっていた手を休め、水色の作業着を着た年配の職員のひとりが声をかけてきた。確か小林さんといっただろうか。
「どうも、ご無沙汰してます。池の清掃だって聞いたものだから、タイルのはがれなどあったら修繕しようと思って」
「そうでしたか。ざっと見たところ大丈夫のようですよ」
「それならよかった」
「あ、三橋君、こちら山下さんといって、この池の人魚のモザイクを作ってくれた芸術家さん」
 小林さんが同じようにブラシで池の床をこすっていたもうひとりの若い男性に、そう声をかけた。「芸術家」などと呼ばれると自分ではないような気がする。
「どうも、三橋です。この人魚、子供たちに評判いいですよ」
「そうですか。それは嬉しいですね。ぼくもね、この人魚はすごく気に入ってるんですよ」
「近所じゃあ、この公園を『人魚公園』って呼んでるくらいですからね。山下さんのモザイク画があってこその公園ですよ」
 小林さんはそう言って笑った。

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電子書籍■連作ショートショート 人魚 03 人工の人魚

連作ショートショート 人魚 03 人工の人魚

・内容紹介
「人魚」をテーマにしたショートショート作品の連作のひとつです。
※本文より
「よかったら、モデルになってもらえないかな」
 そう言われたのは、その人と会ってから15分もしなかったのではないかと思います。
 そこはお気に入りの喫茶店で、全体的に板張りの温かい雰囲気があり、その上、店の奥の壁が一面ガラス窓になっていて都心とは思えない落ち着いた感じの緑豊かな中庭が眺められるのが気に入っていて、月に数回、ひとりでぼうっとしたいときなどにコーヒーを飲みに来ているんです。
 その日も窓際のテーブル席に着き、ぼんやりと中庭を眺めながらコーヒーを飲んでいると、向かいのテーブルで本を読んでいた男性とふと目が合いました。
 その人は40代くらいの男性で、ラフな服装もしていたので、最初からサラリーマンなど会社勤めをしているようには見えませんでした。そして、軽く会釈をしたあと、わたしの座っているテーブルに近寄ってくると唐突にモデルになってくれと言い、ちょっと話をしてもいいだろうかと確認して、テーブルを挟んでイスに腰掛けたんです。
 普段ならこの店にいるときに他人と関わることは望まないのですが、このときはなぜかその男性の話を聞いてみてもいいと思いました。モデルに、という言葉になにか期待するようなものがあったのかもしれません。
「モデルというと、写真か何かですか」
「いや、彫刻なんですけどね。いま取り組んでいるテーマに、あなたはピッタリなんです」
 わたしの目をじっと見つめてその人はそう言い、その真剣なまなざしに、わたしもつい答えてしまっていたんです。
「わたしでよければ…」

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電子書籍■連作ショートショート 人魚 02 川面の人魚

連作ショートショート 人魚 02 川面の人魚

・内容紹介
「人魚」をテーマにしたショートショート作品の連作のひとつです。
※本文より
 誰かがマネキンでも捨てたのかと疑ったが、それにしては明らかに「泳いでいる」ように見えた。
 全体がうっすらと見えると腰から下は魚…そう人魚なのだった。
 電車は速度を増し、人魚を追い越していく。人魚もそのまま深く潜ってしまったのか見えなくなってしまった。
 あれはいったい…。

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電子書籍■連作ショートショート 人魚 01 水槽の人魚

連作ショートショート 人魚 01 水槽の人魚

・内容紹介
「人魚」をテーマにしたショートショート作品の連作のひとつです。
※本文より
 いや、それは見慣れないだけではなく、あるはずのないものだった。
 それはまるで童話の絵本に出てくるような人魚だったのだ。
 光を反射するうろこを持った腰から下の魚の部分と、少女のような、栗色の少しウェーブのかかった長い髪の上半身。手のひらに乗りそうな小さな人魚は水草のあいだからこちらをうかがっていた。
 後から考えてみれば二、三秒のことだったのではないかと思う。自分の目が信じられないと感じながら、人魚の姿を凝視していた。
 水の中からこちらがどのように見えていたのか…わたしの視線を感じたのか、人魚はクルリと体の向きを変えるとスッと水草の間に隠れてしまった。
 わたしは水槽の前を行ったり来たりしながら人魚の姿をもう一度確かめようと探したが、どうしても見つからなかった。水草にしろ珊瑚を模したオブジェクトにしろ、そこに何かがいるのであれば完全に隠れることはできない程度のものしかないのだが、どうしても人魚の姿を見つけることはできなかった。
 やっぱり目の錯覚か。
 それにしてはいやにハッキリと…。

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電子書籍■霧の少女 連作ショートショート 少女

霧の少女 連作ショートショート 少女

・内容紹介
少女をテーマにしたショートショートのシリーズ作品です。
幻想文学を標榜しています。
1~3話は合本版も販売中です。
※本文より
 年に1、2回。いや数年に、だろうか、東京でも濃霧といえるような霧に包まれることがある。深夜、そんな霧の中にぼうっと霞む街路灯の光は幻想的な美しさでボクを魅了する。めったにないことだから、コンビニに買い物にでもと自分にいい訳をして、たいして急ぐこともない買い物に霧の中を出掛けたりもする。霧のひんやりとした感触、それでいて少し蒸っとしたような空気が好きだ。そう、その夜もそんな霧が街を包んでいた。
 コンビニまではまっすぐ歩けばほんの2、3分の距離だが、わざわざ遠回りをして公園の中を抜けていく。霧が街灯の光を反射して周辺がぼうっと白く霞んで見える。タクシーがスピードをゆるめて走っていく。ヘッドライトが霧の中に溶けている。
 静かだ。深夜でも車の断えない東京だが、雪の夜やこんな霧の夜には森と静まり返り…その静けさが新鮮に思える。
 全身がしっとりと湿ってくる。この感触もなんともいえない。
 公園の木々が霧の中にその輪郭をぼやけさせ溶け込んでいる。ベンチが、ブランコなどの遊具が幻のように見える。そんな中、いくつかあるベンチのひとつに人が腰掛けているような影が見えた。こちらの進んでいく方向にあるベンチなのでそのまま近づいていくと、霧の中にその人影が女性であることがわかった。
 ベンチに腰掛けている、といっても普通に座っていたわけではない。横向きに、両足をベンチの上に乗せて膝を抱えるようにして座っている。
 深夜に、しかもこんな霧の中で公園のベンチにひとりで座っているというのはどういうことだろう。家出をしていくところがないという雰囲気にも見えなかった。もしかするとボクのように、この霧に誘われて家を出てきたのかもしれない。

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電子書籍■雪の日の少女 連作ショートショート 少女

雪の日の少女 連作ショートショート 少女

・内容紹介
少女をテーマにしたショートショートのシリーズ作品です。
幻想文学を標榜しています。
1~3話は合本版も販売中です。
※本文より
 その日、夜明け前から降り始めた雪で街は白の絵の具で塗りつぶしたように見えた。東京でもこんなに雪が降ることがあるんだ、と驚くというより感心するような、そんな気分だった。
 自宅でデザインの仕事をしている関係で平日の昼間でも時間は自由に使える。こんな風景は滅多に見られるものではない、とわたしはデジタル一眼レフを手に散歩に出ることにした。午後になると雪も小やみになり傘の必要もなかった。
 さすがに表通りは車の通りもあって雪は片づけられていたが、近所の遊歩道は人の足跡もなく、東京とは思えないような風景が撮れた。
 雪の積もったベンチや木々は、普段見なれていないこともあって幻想的な風景に思える。
 そしてそんな風景にカメラを向けているとき、ファインダーの中にあの少女を見たのだった。
 あれ、と思ってカメラから目を離し、少女が居た方向を見てみたが、まったくそんな人影はない。木の影にでも隠れたかと一瞬思ったが、遊歩道に沿って建つ住宅が並んでいるそんな場所に植えられた木の影に入って遊んでいるような子供は普段からいないし、ましてや今日は雪でどこからが歩道だかわからないような状況だ。よく考えてみればそのあたりに人の足跡も見えない。
 なにかを見間違えたか、とまたカメラを目に当ててその方向に向けてみると、また少女の姿がファインダーの中にあった。

03

電子書籍■雨に濡れた少女 連作ショートショート 少女

雨に濡れた少女 連作ショートショート 少女

・内容紹介
少女をテーマにしたショートショートのシリーズ作品です。
幻想文学を標榜しています。
1~3話は合本版も販売中です。
※本文より
 台風がいってしまうと、それまでの残暑が嘘のように肌寒いほどの気温になった。その上この2、3日は雨が続き気分が滅入る。
 その日もデザイン学校の課題をどうするか考えながらボクは駅へと傘を前にちょっと傾けて歩いていた。雨は強くなったり弱くなったり、短い時間にその勢いを変えていた。
 週明けが締め切りの課題はアクリル絵の具を使ったイラストで、なにを描くかは自由だったのだが、それだけになにを描くか決められないまま時間だけがすぎてしまっていた。とりあえず、と昨夜はパネルにケント紙を水張りしてみたのだが、真っ白な画面を見つめていても具体的なイメージは浮かんでこないまま眠ってしまった。
 ぼんやりと、女性というモチーフは固めているのだけれど、それをどう描くかが浮かんでこない。少しでもイメージが固められないものかと、駅に向かう道を少し遠回りして近くの公園の中を通ってみることにした。
 公園の入り口に差しかかるとまた雨が激しくなってきた。
 その激しさはこれまでのものとは違って、まるで夕立のような感じで傘を持つ手にも叩きつける雨粒を感じる。ボクはそのまま公園を通りすぎるのをやめて公園内の東家で雨の勢いが弱まるのを待つことにした。
 時間は午前10時半を回ったころで、普段ならお年寄りや子供を連れた若いお母さんといった人たちを見かけもするが、この雨では自分のほかには人影はない。と思っているとその雨の中を小走りに自分と同じように東家に入ってきた少女がいた。もっとも傘もささず雨の中を走ってきたようだ。

02

電子書籍■眠れる少女 連作ショートショート:少女

眠れる少女 連作ショートショート:少女

・内容紹介
連作ショートショートのシリーズで少女をテーマにした作品です。
幻想文学を標榜しています。
1~3話は合本版も販売中です。
※本文より
 夜、寝る前に一杯の酒を飲むのがわたしの楽しみだ。いわゆる寝酒、ナイトキャップとかいうやつだ。もともと酒が強い方ではないから、ビールだったら350ミリリットルひと缶で十分。500ミリリットルでは多すぎるというところだ。量は飲まない、いや飲めないとはいえ酒は好きなのでいろいろな種類のものを飲んでいる。最近ではモルトウィスキーが好みだ。そんなわけでその夜もロックグラスに、店で飲んだらダブルほどの量を注いで、冷凍庫から氷を出してグラスに3、4コ入れたのだった。
 そのグラスを持ってベッドに行き、ベッドサイドのスタンドの明かりで本を読みながらチビチビと酒を飲む。30分もすると眠くなって、そのまま寝るというのがいつものことだった。しかしその夜はちょっと違っていた。ベッドに腰掛け、本を膝の上に乗せ、まずはひと口、とグラスを手にしたときに、グラスの中にチラリと黒い陰が目に入ったのだ。最初はなにかゴミが入ったかと思い、じっとみてみると、どうも氷の中にその陰はあるらしい。冷凍庫に製氷機を入れる前にゴミが混じったか、と思ったのだが、よくよくみているとその黒い陰はどうも何かの形をしている。酒と氷で像がゆがんで見えるだけかとも思ったのだが、グラスの上から、横から角度を変えていろいろ見てみても、それはひとの形に見えるのだ。

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電子書籍■少女/1~3合本: 連作ショートショート

少女/1~3合本: 連作ショートショート

・内容紹介
「少女」をテーマにしたショートショート作品3編を収録しました。
幻想文学になるかと思います。

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