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2009年12月

■オーバーマン キングゲイナー/中村嘉宏・富野由悠季

初出/メディアファクトリー・コミックフラッパー(2002年6月号~2008年4月号)
書誌/メディアファクトリー・MFコミックス フラッパーシリーズ(全7巻)

 本作は富野由悠季監督のアニメ作品『オーバーマン  キングゲイナー』のコミカライズ。作画を担当した中村嘉宏はアニメ版のキャラクターデザインにも関わっている。
 ストーリー自体は大筋でアニメ版をなぞっているが、細かいエピソードや設定の部分で多少の差異がある。アニメとコミックの違い、さらには月刊誌での連載ということでもアニメの内容をそのまま描くことができなかったということだと思う。
 個人的にアニメ版のファンであり、アニメがよかったからこのコミック版にも手を延ばしてみたというのが正直なところなのだが、なかなかまとまっていてよかったと思う。とはいえ、リアルタイムで連載を読んでいたら、また印象が違っていたかもしれない。単行本だけを追いかけていたとしても、次の巻が出るまでに時間がかかっていたので、最初から読み返さないと…ということがあっただろう(自分は今回完結を機に一気に読みました)。
 たいていのコミカライズはアニメ版との絵の違いが気になってしまったりするのだが、本作ではアニメの絵がそのままコミックで見られるというところで違和感を感じさせないのがいい。結果的にアニメのダイジェスト版的なものになっているので、コミックを読んだあと、アニメ版をもう一度見直したくなった。
 

■七色仮面/一峰大二・川内康範

書 名/七色仮面
著者名/一峰大二・川内康範
出版元/パンローリング
判 型/B6版
定 価/1800円+税
シリーズ名/マンガショップシリーズ
初版発行日/2009年12月3日
収録作品/上巻・コブラ仮面の巻(講談社「ぼくら」1959年7~11月号)
     中巻・キングローズの巻(講談社「ぼくら」1959年12月号)
        レッドジャガーの巻(講談社「ぼくら」1960年新年号)
        スリーエースの巻(講談社「ぼくら」1960年2~3月号)
        竜虎の地図の巻 前編(講談社「ぼくら」1960年3~4月号)
     下巻・竜虎の地図の巻 後編(講談社「ぼくら」1960年4月号
        新七色仮面
        毒ぐもに手を出すな!の巻(講談社「ぼくら」1960年5~6月号)
        日本はねらわれている!の巻(講談社「ぼくら」1960年7~9月号)

『月光仮面』に続く、川内康範原作のテレビドラマのコミカライズ作品。この時代の作品は当時単行本がでていてもその後再刊行される機会のなかったものが多く、本作も長く気軽に読める状態になかった。今回は連載誌「ぼくら」の本誌と付録に掲載されたものを全3巻にまとめている。が、どうやら増刊号掲載分など、未収録もあるようだ。
 テレビドラマの方は途中で主演俳優が交代し、タイトルも『七色仮面』から『新七色仮面』に変更されており、コミカライズである本作もそれに合わせてタイトルの変更が行われているが、内容的な変更はない。
 一峰大二の作品としては『ナショナルキッド』や『電人アロー』などが時期的に近い、同系統の作品になると思うが、この『七色仮面』はキャラクターの動きや作画面でも断然抜き出でているように思えた。なによりも実写作品であるテレビドラマの、異様に頭でっかちな「七色仮面」がスマートに描かれているのがいい(笑)。
 川内康範の原作ということで、タイトルの印象からのちの『レインボーマン』にもつながるようなものを予想していたのだが、「七色」ということ以外、まったく共通するものはなかった。また「七色仮面」となって活躍する探偵・蘭光太郎は普段から変装名人として知られてもおり、わざわざ正体を隠して「七色仮面」になる必然性も感じられないのは少々残念ではあった。
 本作の刊行によって、マンガショップからは『月光仮面(桑田次郎)』『七色仮面』『太陽仮面(堀江 卓)』と、川内康範原作の仮面シリーズ3作が刊行された。
 

■スーパージャイアンツ

書 名/スーパージャイアンツ
著者名/桑田次郎、一峰大二、吉田竜夫、横山まさみち(原作・宮川一郎)
出版元/パンローリング
判 型/B6版
定 価/1800円+税
シリーズ名/マンガショップシリーズ
初版発行日/1巻~4巻・2009年11月2日
収録作品/1巻・桑田次郎
        鋼鉄の巨人の巻・講談社「ぼくら」1957年9月号
        怪星人の魔城 地球滅亡寸前の巻・〃 1957年11月号
        人工衛星と人類の破滅の巻・〃 1958年2月号
        宇宙怪人出現!の巻・〃 1958年6月号
        一峰大二
        悪魔の化身の巻・講談社「ぼくら」1959年5月号
        謎の毒蛾王国の巻・〃 1959年6月号
     2巻・吉田竜夫
        緑の小人の巻・講談社「ぼくら」1959年8月号~11月号
        恐怖の獣人の巻・〃 1959年12月号~1960年1月号
        原子怪獣ギャプロスの巻・〃 1960年2月号~5月号
        遊星デモスの怪獣の巻 前編・〃 1960年6月号
     3巻・吉田竜夫
        遊星デモスの怪獣の巻 後編・講談社「ぼくら」1960年7月~9月号
        海賊黒いさそりの巻・〃 1960年10月~12月号
        スモーク人間の恐怖の巻・〃 1961年1月~6月号
     4巻・横山まさみち
        宇宙怪人出現!の巻・富士見出版社1959年
        謎の毒蛾王国の巻・〃 1959年
        * * * * *
        マイティ・ボーイ(横山まさみちオリジナル作品)
        地球盗難の巻・芳文社「痛快ブック」1960年1月号
        冷凍仮面の巻・〃 1960年2月号
        湖底の人工衛星の巻・〃 1960年夏の増刊号

 実写特撮映画のコミカライズ作品として4人の漫画家によって描かれたもの(吉田竜夫担当分は漫画版のみのオリジナルストーリー)。そのような事情もあってかなかなか単行本として刊行される機会に恵まれなかった作品でもある。
 桑田、一峰、吉田の担当分はそれぞれ講談社の「ぼくら」に掲載されたが、横山は描き下ろしという形で刊行されたようだ。「ぼくら」掲載作品より少し上の年代に向けられていたような印象がある。
 スーパージャイアンツは地球(というより日本)で事件が起こると宇宙からその都度やってくるという感じで、地球に住み着いて事件を解決するというヒーローではないようだ。各エピソードに登場する少年主人公も、同じような設定でありながら毎回違うキャラクターになっている。桑田次郎が担当した最初のエピソードでは反核兵器という思想もみられるが、それ以後は単に地球を侵略しようとする宇宙人と戦う、正義の宇宙人という印象になっている。吉田が担当した「緑の小人」では、「ヤムヲエン 宇宙人ドウシデ タタカウカ」と、後にテレビドラマ『ウルトラマン』や『ウルトラセブン』で聞かれたようなセリフも飛び出している。
 横山版は同じエピソードを違う出版社で刊行したということで、内容的には同じなのだが、連載作品ではなく一冊で読ませるということもあってか、落ち着いた展開になっているような印象があった。とはいえ横山の場合、同時に収録されたオリジナル作品『マイティ・ボーイ』のほうがのびのびと描かれていて好印象だ。最後の「湖底の人工衛星の巻」は、『ウルトラマン』の「故郷は地球(ジャミラの巻)」にも似た話しだった。
 

■妖棋死人帳/水木しげる

書 名/妖棋死人帳
著者名/水木しげる
出版元/小学館クリエイティブ
判 型/A5版
定 価/1900円+税
シリーズ名/復刻漫画名作シリーズ(ただし本書にこの記載はない)
初版発行日/2009年10月19日
収録作品/妖棋死人帳

 1966年12月号の「月刊ガロ」で描き直して掲載され(ちなみに「ガロ」はこの号、『カムイ伝』が休載のため、この作品を巻頭に掲載している)、サンコミックスにも収録されたもののオリジナル貸本版を復刻したもの。
 ある武家の次男坊である主人公が、ふと手に入れた古書「死人帳」は、死んだ者が死に神から受け取り読むもので、生きながらそれを読んでしまった主人公は死に神によって冥土へと連れて行かれてしまう、というのが大まかなストーリー。
 描き直し版ではタイトルも『怪奇死人帳』と改められ、サンコミ以後もサンワイドコミックスなどで刊行されたので読まれた読者も多いだろう。貸本版との差異は、ビジュアル面だけでセリフもコマ運びも変わってはいない。強いて言えば貸本版と雑誌版では1ページのコマ割りが3段と4段という違いがあるので、その分ページ数が少なくなっている。
 ビジュアル面ではやはり雑誌版の方が細かい描き込みがされており、主人公が「お花番」という役職で担当する毒草園の描写においては貸本版とは比べ物にならない。とはいえビジュアル面がスッキリしたから作品の出来が上がるというわけでもない。貸本版に見られる迫力やおどろおどろしさは雑誌版では薄れてしまっている印象がある。『怪奇死人帳』を読まれたことがあるなら、ぜひオリジナルの『妖棋死人帳』も読んでみてほしい。
 

■地獄の水/水木しげる

書 名/地獄の水
著者名/水木しげる
出版元/小学館クリエイティブ
判 型/四六版
定 価/1900円+税
シリーズ名/復刻名作漫画シリーズ(ただし本書にはこの表記はない)
初版発行日/2008年8月26日
収録作品/地獄の水

 この作品ものちにリメイクされたもののひとつだ。
 特筆すべきは、やはり主人公の父親が地獄の水によって体が溶けてしまい、目玉だけになり、その目玉に小さな体がついている、鬼太郎の目玉おやじ状態になっている点だろう。
 さらには鬼太郎の原型(絵柄的に)とも思えるキャラクターも登場している。
 ストーリー自体は神秘的なものだが街を破壊したり人間を飲み込んで溶かしたりと、スペクタクルな展開も見られる。
 本書はオリジナル版では東真一郎名義で刊行された。
 

■駆逐艦魂/水木しげる

書 名/駆逐艦魂
著者名/水木しげる
出版元/小学館クリエイティブ
判 型/A5版
定 価/1900円+税
シリーズ名/復刻漫画名作シリーズ(ただし本書にこの記載はない)
初版発行日/2008年12月27日
収録作品/駆逐艦魂

 怪奇漫画、妖怪漫画の作者として有名な水木であるが、同時に戦記漫画の作者としても、その戦争体験からよく知られている。
 とはいえ貸本時代に発表された戦記漫画の多くは容易に入手できる形では復刻されていないのが現状だろう。
 昭和30、40年代には、確かに戦記物というジャンルが確立していて、貸本漫画でもブームを作った時期があった。とはいえ戦争を知らない子供たちに向けた「漫画」であるから、戦争実体験を語るようなものではなく、ゼロ戦のカッコよさやヒーロー的な主人公の活躍というのがメインにはなる。そんな中で水木が描いた本作は、そういった戦記物とはずいぶんと違ったものだったに違いない。だが、だからこそ、いま読み返してみる価値がある作品ともいえる。
 揚子江での機雷除去という地味な始まりから、南太平洋へと舞台が移ると手に汗握るスペクタクルとなって読者を魅了する艦隊戦となる。ドラマとしても読み応えのある作品に仕上がっているので、いままで復刻されて来なかったのが残念だ。
 

■怪獣ラバン/水木しげる

書 名/怪獣ラバン
著者名/水木しげる
出版元/小学館クリエイティブ
判 型/四六版
定 価/1900円+税
シリーズ名/復刻名作漫画シリーズ(ただし本書にはこの表記はない)
初版発行日/2009年7月22日
収録作品/怪獣ラバン

 水木しげるに限らず、貸本漫画で活躍しのちに雑誌に移って行った作家たちは、貸本時代の作品を雑誌でリメイクしている。本書も『ないしょのはなし(墓場鬼太郎)』を経て『ゲゲゲの鬼太郎・大海獣』と2回リメイクされている。
 大まかな筋立ては同じだが、『大海獣』で鯨の祖先の血を輸血するところを、オリジナルである『怪獣ラバン』では、ゴジラの血を輸血することになっている。そう、つまりは映画『ゴジラ』から派生した作品のひとつだったというわけである。
 とはいえ「ゴジラ」自体はほとんど登場しない、まったくのオリジナルストーリーでなのだが、「ラバン」という名称がどこからでてくるのか、ちょっと唐突なところもある。また描き下ろしの単行本ということもあってストーリー展開は余裕があるのだが、最後に来て突然のハッピーエンドというのはいささかシラける。
 いずれにしろこれまで復刻されて来なかった作品なだけに、オリジナルの完全復刻というのはうれしい限りだ。今回の復刻では京極夏彦が原本を提供している。またオリジナル版は水木ではなく東真一郎名義で刊行され、内扉に制作・水木漫画プロという表記がなされている。

■怪奇猫娘/水木しげる

書 名/怪奇猫娘
著者名/水木しげる
出版元/小学館クリエイティブ
判 型/四六版
定 価/1900円+税
シリーズ名/復刻名作漫画シリーズ(ただし本書にはこの表記はない)
初版発行日/2008年11月30日
収録作品/怪奇猫娘

 水木しげるの作品に登場する猫娘といえば,『ゲゲゲの鬼太郎』、とくにアニメ版のキャラクターの印象が強い。実際水木原作版の『~鬼太郎』に猫娘が登場しているのは、貸本時代の『鬼太郎夜話』を別にすれば、かなりあとになってからのシリーズである。
 自分は本書『怪奇猫娘』の存在を知らなかったので、てっきり猫娘というキャラクターは『鬼太郎夜話』が初登場だと思っていた。『鬼太郎夜話』でも十分インパクトのある登場人物だったわけだが、本書ではさらにその生い立ちに踏み込んで描かれている、というのが感想である。ただしキャラクターとしての魅力はやはり『鬼太郎夜話』に登場する猫娘の方が上だろう。
 意外と救いのない話しでもある。
 本書もオリジナルは東真一郎名義で、内扉に制作・水木漫画プロの表記がされている。
 

■火星年代記/水木しげる

書 名/火星年代記
著者名/水木しげる
出版元/小学館クリエイティブ
判 型/A5版
定 価/1900円+税
シリーズ名/復刻漫画名作シリーズ(ただし本書にこの記載はない)
初版発行日/2008年11月1日
収録作品/火星年代記

 タイトルから受ける印象は現代、または未来を舞台にしたSFだろうが、なんとこれが時代劇なのだから驚かされる。
 もちろんタイトル通りの時代SFドラマと言って言えないわけではないが、基本的には怪奇時代劇にはかわりはない。
 怪しげな宗教に取り込まれた息子を救い出そうとする父と、その剣術の弟子であり、息子の親友でもある主人公の物語である。
 モゲータと名乗る怪しい人物は、霊波を操り死人を蘇らせて手足のごとく使っている。古い書物によればその霊波を防ぐにはしめなわとさかきが有効だと知り、主人公たちは頭にしめなわとさかきを付けて対抗するのだが…。
 迷信やまじないの中にも真実が含まれているという、水木の他の作品でも見られる思想がここでも語られている。また、『妖棋死人帳』の巻末で読者の手紙に答えた水木の言葉に、本作の構想が大きかったため、ページ数の都合で割愛した部分が多々あったというようなことを言っていた。たしかにSF的要素を説明するにはあっさりしすぎていた感はある。このあたりのアイデアをもっと膨らませた作品が、その後、石森章太郎などが描いた作品に見受けられたりしている。
 

■鈴の音/水木しげる

書 名/鈴の音
著者名/水木しげる
出版元/小学館クリエイティブ
判 型/A5版
定 価/1900円+税
シリーズ名/復刻漫画名作シリーズ(ただし本書にこの記載はない)
初版発行日/2009年5月25日
収録作品/鈴の音

 本作は『火星年代記』『妖棋死人帳』と並んで貸本時代の三大長編怪奇時代劇と言われているらしい。
 中でも本作は正統派の怪奇漫画として仕上がっているのではないだろうか。
 長く借り手のつかない「陣屋」とは呼ばれる建物に、突然借り手がつく。その借り主である武家は、金もあり、美しい娘と二人暮らし。しかし奇妙な行動で周囲から警戒される。
「陣屋」を管理する家の息子である主人公は、武家の娘と親しくなり、徐々に武家の奇妙な行動の理由を知ることになるのだが…。
 40年に及ぶ呪いによって憔悴し、やがてその死を覚悟する武家。人知を超越した存在に触れることの恐ろしさを描いた作品である。
 水木の作品には、われわれが普段生活している世界と隣り合わせに見えない世界があるということ描いたものが多いような気がする。それは『墓場鬼太郎』にもいえるだろう。それまで見ることができなかった世界を見る力を得てしまったとか、偶然から覗き見てしまったというストーリーが水木作品にはけっこうある。そしてそういう世界に触れてしまう者はおうおうにして、古い言い伝えや迷信をばかにしている者だったりする。
 

■ねこ目の少女/楳図かずお

書 名/ねこ目の少女
著者名/楳図かずお
出版元/小学館クリエイティブ
判 型/A5判
定 価/2300円+税
シリーズ名/復刻漫画名作シリーズ(ただし本書にこの記載はない)
初版発行日/2008年3月19日
収録作品/ねこ目の少女、ゆうれいがやってくる

『ねこ目の少女』は講談社の週刊『少女フレンド』1965年26号~29号に連載されたあと、貸本屋向けの単行本としてまとめられた。その際『ゆうれいがやってくる』(別冊『少女フレンド』1965年新学期おたのしみ号)も併録され、本書はその復刻版となる。
 また『ねこ目の少女は』はその後、別冊「少女フレンド」や「なかよし」に転載されたあと、秋田書店・秋田サンデーコミックスの『ミイラ先生』に併録された。『ゆうれいがやってくる』の方は、やはり貸本向け単行本の『呪いの面』に併録されたあと、秋田サンデーコミックス『百本目の針』に併録され、さらに小学館『妄想の花園/はじめの妄想』に収録されている。どの時点かはわからないが(たぶん『百本目の針』収録時)、背景などに加筆が加えられ、本書で復刻されたものと『妄想の花園』に収録されたものでは画面の密度がかなり違っている。
 すでに作品発表の場所を貸本単行本から商業雑誌へと移したあとの作品だが、当時の出版状況から単行本としてまとめられたのは貸し本向け単行本ということになったと考えられる。版元の佐藤プロとは商業雑誌以前にも貸本でつき合いのあった仲でもあり、この時期の作品は雑誌に発表されたあと佐藤プロから単行本化されているものが多い。
 〇〇の少女、というタイトルは初期作品の『幽霊を呼ぶ少女』が最初で、その後たびたび使われているが、本作が発表された1965年には『赤い服の少女』『まだらの少女(のちに『まだらの恐怖』に改題)』『きちがいやしきの少女(のちに『呪われた屋敷の少女』に改題)』を発表している。
 

■人魚物語/楳図かずお

書 名/人魚物語
著者名/楳図かずお
出版元/小学館クリエイティブ
判 型/A5判・カバー装
定 価/2300円+税
シリーズ名/復刻漫画名作シリーズ(ただし本書にこの記載はない)
初版発行日/2007年7月4日
収録作品/人魚物語(講談社・少女フレンド/1966年26号~29号)
          あなたの青い火が消える!(講談社・少女フレンド/1965年46号)
          百本目の針(講談社・少女フレンド/1965年30号)
     
 楳図かずおのデビュー50周年とも重なり、小学館クリエイティブでの旧著復刻は盛んになり、本書もその一冊。元版は佐藤プロの貸本屋向け単行本「花文庫」だが、このシリーズでも当時、楳図の作品はかなり集中して出されていたようだ。
 少女漫画の貸本短編集「花」や「虹」といったメディアから大手少女マンガ誌である「少女フレンド」に活躍の場を移し,さらには「少年マガジン」などの少年誌へと進出していくころの楳図かずおであるから、衰退をはじめていた貸本出版社としては、楳図の作品は安定した売り上げを見込めるものだったのは想像できる。そこで貸本短編集に掲載された作品以外にも、本書のように大手商業雑誌に連載、発表された作品も刊行本という形で出されることになったのだろう。現在のように掲載雑誌のブランドで連載作品が単行本化されることがシステム化されていなかった時代であるから、雑誌に発表した作品を二次使用できる貸本屋向け単行本も、作家にとっては渡りに舟だったかもしれない。
 しかし、そのようにして出された単行本の元原稿はそのまま紛失してしまう。本書に収録された作品も、その後にだされた単行本などはトレース原稿やトレース原稿に加筆や修正を加えたもので、オリジナルの復刻は今回が初めてとなる。
 表題作である『人魚物語』は、人魚姫に雪女のエッセンスを加えたような雰囲気のファンタジー。『あなたの青い火が消える』は貸本で発表したものを「少女フレンド」向けにリメイクしたもの。『百本目の針』は藁人形の呪いをアレンジしたアイデアの作品である。『人魚物語』以外は読み切りでもあり、結末がちょっといきなりすぎるきらいもあるが、納得できないものではない。少女マンガ誌ということを意識したのか、貸本に発表されていた恐怖作品より画面的にもあっさりした印象がある。もっともこの時期の楳図は仕事量が増えてアシスタントを使い始めたということであり、もしかしたら描き込みたくても描き込めないような状況もあったのかもしれない。

■赤んぼ少女/楳図かずお

初出/講談社・少女フレンド(1967年・30号~39号)
書誌/佐藤プロ・花文庫20(B6版/全1巻)
      秋田書店・秋田サンデーコミックス(全1巻/のろいの館)
      秋田書店・秋田漫画文庫(旧)(全1巻/のろいの館)
      小学館・BCシリーズ(楳図かずお恐怖劇場/第1巻)
      小学館・SVC(恐怖劇場/1巻)
      角川書店・角川ホラー文庫(全1巻)
      小学館・楳図パーフェクション(全1巻)
   
 ある意味、楳図かずおの恐怖漫画の中では一番有名な作品と言っていいかもしれない。が、多くの読者は原題である『赤んぼ少女』としてではなく、秋田サンデーコミックス版の『のろいの館』として読んでいるのではないだろうか。
 かわいいはずの赤ちゃんが顔を背けたくなるような形相で迫ってくるというこの作品も、楳図かずおらしい人間の心理をえぐる内容になっている。とはいえビジュアルの怖さというか、怪物が登場するということにこだわったためか、赤んぼ少女であるタマミの異常な能力を描きながら、その理由には触れないで終わってしまった感もある。盛り上げるだけ盛り上げながら、急展開のラストはもしかしたら作者の意図していたことではなかったのかもしれない。
 楳図作品には「美」と「醜」の対立とか葛藤というテーマがよく扱われるが、本作でも主人公・葉子の「美」に対するタマミの「醜」という構図が描かれている。これは髙也という青年が登場することで、さらに明確にされていく。
 これら上辺だけの(ビジュアルだけの)怖さではないものが、楳図作品が長く読まれ続けている理由のひとつといえるだろうし、本作も発表から40年を経て、2008年に劇場映画化されたことでも、その根底に流れるストーリーの確かさが証明されているだろう。
 
 
※書誌は「半魚文庫 http://www.kanazawa-bidai.ac.jp/~hangyo/hobby/ume.htm」を参考にさせていただきました。

■猫面/楳図かずお

初出/描き下ろし(1963年・貸本)
書誌/佐藤プロ・楳図かずお恐怖シリーズ
         佐藤プロ・ナック(1~2号・1967年7月、9月)
         佐藤プロ・ティーンルック(13~15号・1968年)
         佐藤プロ・花文庫(1969年)
         こだま出版・狐がくれた木の葉っぱ(1984年)
         小学館・妄想の花園 はじめの妄想(2001年)
         小学館クリエイティブ・復刻名作漫画シリーズ(2008年8月26日)
      
 本作は、すでに恐怖漫画というジャンルに手を染めていた楳図が、その恐怖として残酷描写に挑んだものです。
 タイトルのように、猫にそっくりな顔を持って生まれたある猫ぎらいな殿様の子供が、成長し城主となったのち、一目惚れした女性の恋人を、人工的に自分と同じような顔に作り替えるというシーンがそのハイライト。例えばそれは、後に『半魚人』でも描かれる刃物で口の両端を切り開くものだったり、型に押し込めて無理やり猫背にするのもだったり、鉤の付いた鞭で打つものだったりしますが、城が火事になり、そのどさくさで城主と、人工的に猫面にされた恋人が入れ換わり、しかし立場が入れ替わっただけで残酷な刑は続けられていくという内容です。もちろんここには楳図作品の特徴である人の心の恐ろしさ、憎しみなどの心が常識を逸脱していく恐ろしさが描かれています。
 作品が発表された当時、貸本業界は白土三平などのリアルさを追求した忍者もの、時代劇が人気で、一般的にも南条範夫の残酷ものが流行っていたようです。このような流行りはいったん収束しましたが、その後スプラッターと呼ばれてふたたび流行しました。
 楳図はスプラッターブームの頃には『神の左手悪魔の右手』という連作ものを手がけていて、肉体的な(痛みの)恐怖を描きましたが、そのおよそ20年前に描かれた『猫面』の迫力を越えることはなかったように思います。小学館クリエイティブで復刻された当時の作品を読んでみると、『神の左手悪魔の右手』に比べて圧倒的に描き込みが少ない印象ですが、猫にそっくりな異形の登場人物の持つ存在感、なによりも描写の勢いというものが『猫面』にはあると感じられます。
 
 初出単行本が刊行されたあと、佐藤プロの貸本向け短編集に2回、3回の分載として再録。その後、花文庫の1巻として再刊行。このあと原稿が紛失したらしく、こだま出版版でトレス原稿が作られ、妄想の花園ではそのトレス版に補筆したものが使用されました。
 
*umezu半魚文庫(http://www.kanazawa-bidai.ac.jp/~hangyo/umezu/index.htm)の作品リストを参考にしました。

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