涼風家の電子書籍

  • ブクログ

Amazon link

editor community

楽天

ブログセンター

カラメル

あし@

星空

« 2011年6月 | トップページ | 2012年3月 »

2011年9月

本棚の旅■銀猫[女殺し屋編]/佐藤まさあき

書 名/銀猫[女殺し屋編]
著者名/佐藤まさあき
収録作品/銀猫・第1章~第10章
発行所/芸文社
初版発行日/昭和49年12月12日
シリーズ名/芸文コミックス(No.39)

『影男』シリーズや『堕靡泥の星』といった作品で知られる通り、佐藤まさあきといえば男性主人公の作品が圧倒的に多いが、唯一の例外と言っていいのがこの『銀猫』である。
 とはいえ自らを「銀の猫」と称する主人公・理沙は、スパイ組織で訓練を受けた後、組織を抜けて殺し屋となっているので、設定的には他の佐藤作品の主人公たちとあまり変わらないともいえる。
 ただ、佐藤自身があとがきでも述べているように、男性主人公では描けなかったストーリーやキャラクターの心情といったものが描かれているのは確かだろう。実際、女性主人公だからと感じられるストーリー展開も多く、同じ殺し屋として影男を当てていたらまったく違う結末になるだろうと思わせる。また連載時読み切りのエピソードとして描かれていた点でも他の佐藤作品とは一線を画するのではないだろうか。
 佐藤の作品では、松森 正や川崎三枝子といったアシスタントが女性キャラクターを担当していた。この作品の発表当時はすでに松森も独立していていたはずなのだが、松森カラーは女性キャラクターにその後も残っていて、本作では松森の『木曜日のリカ』を参考にしているのではないかと思われるフシがある。特にカバーイラスト、口絵は明らかに『木曜日のリカ』のイメージだ。
 女性が主人公であることからファンション面でも気をつかっていたようで、理沙の服装をシーンごとに変えていたりする。とはいえそのファッション感覚も松森の女性キャラクターに似ていたりするのだが(笑)。
 第1話から殺し屋として登場する理沙だが、第4話でスパイ組織の一員として訓練された過去が語られる。どうやらスパイ時代のエピソードも[女スパイ編]として上梓されることになっていたようなのだが、残念ながら確認できていない(また本作は『セックスハンター』のタイトルで佐藤プロから再刊行されていたと記憶する)。
 タイトルも印象的だし、読み切り連作でストーリーもまとまっているのだが、『影男』『堕靡泥の星』の影に隠れてしまって佐藤作品としてはあまり語られることがないのは非常に残念な作品といえる。[女スパイ編]が描かれていたのなら、ぜひ完全版として併せて再刊行してもらいたい作品だ。

本棚の旅■凶銃ワルサーP38/佐藤まさあき(原作・大藪春彦)

書 名/凶銃ワルサーP38
著者名/佐藤まさあき
収録作品/凶銃ワルサーP38
発行所/芸文社
初版発行日/昭和49年11月22日
シリーズ名/芸文コミックス(No37)

 殺された兄の復讐のため、ワルサーP38を片手に警察に追われながらターゲットを狙うハードボイルド作品。
 オリジナル作品にこだわる佐藤まさあきには珍しい原作付きの作品。原作は大藪春彦の『みな殺しの歌』。佐藤も大藪もガンマニアというところで共感するものがあったのかもしれない。そういえば映画化された『蘇える金狼』のコミカライズも佐藤が担当していた。
 ワルサーP38というとどうしても『ルパン三世』が思い出されてしまうが、この作品が発表された当時はまだそのイメージは浸透していなかっただろう。むしろガンマニアにとって一種の憧れ的な拳銃だったのかもしれない。
 原作を読んでいないのでどこまで忠実か脚色されているのかわからないが、セリフ回しや構成などはほかの佐藤作品の印象と変わらず、原作の表示がなければ佐藤オリジナルと言われてもわからない仕上がりになっている。
 主人公も影男スタイルで言葉づかいも似ている。もっともこのあたりは佐藤の欠点でもあって、ほとんどの作品の主人公は似てしまっている。
 またヒロインに当たる女性キャラクターも他の佐藤作品に酷似した純真な娘であり、あるいは原作とは違っているのかもしれない。
 多少ラストのあっけなさが気にはなるが、全体としてまとまった秀作といえるだろう。
 

本棚の旅■凶銃に生命を賭けろ/佐藤まさあき

書 名/凶銃に生命を賭けろ
著者名/佐藤まさあき
収録作品/凶銃に生命を賭けろ
発行所/芸文社
初版発行日/昭和49年6月1日
シリーズ名/芸文コミックス

 昭和36年に単行本で書き下ろされたものを作者自らの手でリメイクした作品。佐藤にしろ水木にしろ貸本作家が雑誌に進出してから貸本時代の作品をリメイクするというのはよくあったようだ。
 ガンマニアでもあった佐藤らしくさまざまな銃が登場する本作は、影男で代表されるような暗黒街に生きる主人公を描いていくわけだけれど、影男と違って本作はジャズボーカリストであった主人公が殺人現場を目撃してしまい、さらにその射撃の腕を見込まれて暗黒街に入っていく過程が描かれている。佐藤自身は、自分の描く主人公たちは虚無的な性格の人物が多いが本作の場合は虚無に至る前の若々しさを持っていると述べている。
 はじめは自分に群がる多くの女性ファンのひとりのような感覚でつき合っていた女性を、心底愛していたと気づいたり、行きがかり上踏み込んでしまったスナイパーの世界でもがいたりと、確かに影男とは違う「青春もの」的な要素が散りばめられている。もっとも本当の愛を探してさまよう男というのは佐藤作品には案外共通したテーマとして各作品に取り入れられていたところもある。これは作者自らが真実の愛を求めていたということなのかもしれない。
 影男のプロフェッショナルな雰囲気も好きなのだが、本作のようなストーリーもなかなか面白かった。もっともライフル競技で大会に出場するような腕を持っているとはいえ、ジャズボーカリストである主人公がすぐに暗黒街の仕事をこなしていくというのはできすぎではあるけれど。
 
 佐藤まさあきの作品も一部を除いては復刊の機会に恵まれない。これは作者自身が単行本を中心に出版を手がけていたことから他社からの刊行が少なかったということもあるだろう。佐藤自身、なんどか自作の選集、全集も試みたが結局『影男』『堕靡泥の星』といった人気のある作品の刊行に終わってしまった(それも完結をみたものは少ない)。
 日本の漫画史、とくに貸本漫画(作品ばかりではなく出版としても)を語る上で欠かせないひとりでもある佐藤の作品が再び世に出ることを願ってやまない。

本棚の旅■ザ・KAMI/黒田みのる

書 名/ザ・KAMI
著者名/黒田みのる
収録作品/ザ・KAMI(描き下ろし)
発行所/芸文社
初版発行日/昭和50年9月13日
シリーズ名/芸文コミックス・黒田みのる怪奇心霊書下し劇画

 昭和50年当時、心霊やオカルトのブームであり、ワイドショーでは心霊写真の鑑定をしていたりUFOの特番がくまれたしていたと思う。つのだじろうの心霊漫画も本作のあとくらいにブームになっていたのではなかっただろうか。
 本作品でも黒田は心霊…霊魂や神について当時の心霊学にそって解説もしていて、これはつのだの『うしろの百太郎』に先駆けている。
 また本作は全10巻シリーズの描き下ろし作品の第1巻にあたるものなのだが、残念ながらシリーズがキチンと完結したのかどうかは確認できていない。
 黒田はこのような描き下ろし作品をこの時期から多く手がけていたような印象があって、その後にもオカルト作品の単行本や雑誌サイズの描き下ろし作品があった。
 芸文コミックスという青年向けのシリーズであることから多少エロティックな表現も含まれる本作であるが、発表当時の状況などもあり、現在の目から見ればかなりソフトな印象ではある。が、黒田作品においてはそのあたりが巧妙というか、視覚的にはソフトでありながら妙にエロティックな雰囲気をかもしだすのがうまいのである。
 物語は、小学6年のふたりの少年が、夕立に降られ近くの小屋に雨宿りに駆け込むところから始まる。小屋には男女ふたりが先にいて、どうやら男を裏切っていた女に怒り、彼女をレイプし殺してしまうのを目撃してしまう。少年たちに気づいた男はふたりも殺そうとするが、そのとき強い光がその場を包みふたりは光の圧力で小屋の外に放り出され、男は雷に打たれて死んでしまう。
 成長したふたりはある企業で書類を運ぶアルバイトをしていたが、そこの総務課長が自分たちの横領をほかの社員になすり付けていたことを知る。が誰にも言えないまま時は過ぎる。やがてひとりは建築業に、ひとりは牧師となったが、牧師となった彼とつき合っていた女性を建築業に進んだ彼が奪ってしまう。そして、総務課長からも金をゆすっていたことを牧師の彼は知るのだった。
 やがてそんなふたりにも神による裁きがくだされるときが来るのだった。
 描き下ろしということもあってかコマ割りも大きめで画面もあまり描き込まれていないのだが、シリーズの1巻目として「神」をテーマにすることで黒田の意欲はかきたてられていたようである。
 神はすべてを見ているというような結末ではあるのだが、結果的にはアンハッピーな印象であまり救いのある話しではなかったように思う。が、これも時代の空気なのかもしれない。

本棚の旅■大地震/黒田みのる

書 名/大地震
著者名/黒田みのる
収録作品/大地震、遺産管理人
発行所/芸文社
初版発行日/昭和49年8月12日
シリーズ名/芸文コミックス

 表題作の『大地震』は、関東に巨大地震が起こったその瞬間と前後をオムニバスで描く4章から構成されたもの。
 さまざまな状況、環境で地震に遭遇した人々を描いたシュミレーションドラマと言っていいだろう。
 昭和49年といえば、関東に大地震が起こるだろうと不安がられていた時期(これはいまも続いているのだが、いつきてもおかしくない大地震はすっかり人々の意識からは忘れられているようです)。「少年マガジン」では永井 豪の『バンオレンスジャック』が連載されていた時期と重なる。
 住宅密集地での地震後の火災に追われる人々や、ビル街で降ってくる窓ガラスの破片に傷つく人々など、その瞬間に考えられるさまざまな状況を描いている点で、単にパニック作品として地震を扱っているものではないことがうかがえる。
 黒田みのるは怪奇漫画家としても知られ、大半はホラーコミックと言っていいが、本作のような社会派の作品も発表しており、ホラー系作品でも自分の主張を盛り込んだ作品がいくつかあったと記憶する。
 
 併録の『遺産管理人』はそんな黒田本来のホラー系作品。単行本収録に際して後半を大幅に描き変えてあるとのことで、初出時とはだいぶ印象の違う作品になっているようである。

本棚の旅■恐怖への招待/松森 正(原作・北河正郎)

書 名/恐怖への招待
著者名/松森 正(原作・北河正郎)
収録作品/森の家、狂避行、生首収集狂、底なし沼、変身、人形綺譚、狂嵐狂夜、海魔、悪夢病棟
発行所/双葉社
初版発行日/1978年4月15日
シリーズ名/アクション・コミックス

 モダンホラーの連作シリーズ。なかなか粒揃いの秀作で、松森作品のなかでも気に入っているもののひとつなのだが、現在入手はきわめて困難。ぜひ再刊行してもらいたいもののひとつだ。
 幻想的なものから正統派な怪奇もの、猟奇的なものまでさまざまなパターンの作品が読めるという意味でもオススメの一冊。
 個人的には残酷で美しい人魚の登場する「海魔」などがお気に入りだが、全体のグレードも高いので、松森作品をこれから手にするという人にも勧めたい作品集といえる。
 実は初めて読んだ松森作品がこの単行本だった。もちろん『木曜日のリカ』なども知っていたがキチンと読んでいなかった。
 そのころ、「劇画」も読んでみようという気持ちになって、本書と谷口ジローの『事件屋稼業』、平野 仁の『ハード・オン(原作・矢作俊彦)』をまとめて入手し読んでみた。結果どれも面白く、いまだにこの3作品は大好きな作品になっている。
 松森の画は『テキサスの鷹』などに比べると線が整理されてきているが『ライブマシーン』に比べるとまだまだ書き込みが多く画面全体を埋めつくしている印象がある。それでも確かなデッサン力、女性キャラの美しさで谷口、平野よりも松森のファンになってしまった。もっとも松森の場合描写がキレイすぎて、たとえば首を切り落とされてもグロさがないという面はある。だからいいというファンもいると思うが、ときには生々しさがあってもいいかもしれない。
 松森はこのあと関川夏央とのコンビで『地球最期の日』、そして狩撫麻礼との『ライブマシーン』を描くことになる。
 

本棚の旅■餓狼の森/松森 正(原作・橋本一郎)

書 名/餓狼の森
著者名/松森 正(原作・橋本一郎)
収録作品/餓狼の森・第1話~第8話
発行所/ひばり書房
初版発行日/1976年8月15日
シリーズ名/ヒバリスーパーコミックス(1)

 本作は藤波という音楽ディレクターを主人公にした、音楽業界を舞台にした人間ドラマ。
 松森作品としては後の『ライブマシーン』にも多少の影響はしているのではないかと思われる。
 原作の橋本一郎は、実は本書自体には記載がない(のちに刊行された「エースファイブコミックス」版で表記された)。
 ジャズに演歌に軍歌、アイドルポップスとジャンルにこだわりなく本物のミュージシャン、歌手を発掘する藤波の姿を通して、表舞台には登場しない不出世の天才などを描いていく物語。女性キャラクターは他の松森作品同様美しく魅力的だが、主人公を始め男性キャラクターたちは音楽業界という舞台にしては渋すぎるきらいがあるかもしれない。一見すると刑事もののような印象すら受けてしまうのは、この時期の松森の特徴かもしれない。
 本書はひばり書房から刊行された単行本としては珍しいB6版。松森作品としては、すでに新書判で『木曜日のリカ』が刊行済みの時期でもあり、青年誌掲載の劇画作品をB6版で出していこうとしていたのかもしれないが「ヒバリスーパーコミックス」というシリーズはほかに出なかったような気がする。また「エースファイブコミックス」で再刊行された際は全8話のうち第2話をカットしての刊行だった(ちなみに「エースファイブコミックス」は奥付がなく刊行時期がはっきりしないのだが、80年代の半ばの刊行だったと記憶する)。
 原作の橋本一郎は本書を始めその他の松森作品に原作を提供した際にも、最初の単行本では原作表記がないということがあった。一般的な少年コミックと違って「劇画」の場合作画と原作が違っていた方が「それらしい」というイメージができていたこともあると思うのだが、時には同じ作者が作画と原作でそれぞれ別のペンネームを使用して表記していたこともある。もちろん原作料が別に発生するというケースもあったようで、松森作品における橋本一郎原作作品もその例ではないかと疑っていた時期も個人的にはあった。
 漫画や劇画で音楽を表現するのはなかなか難しいところもあると思うし、音楽を扱った作品の多くはミュージシャンを主人公にしたものであることを考えると、本作の特徴や視点の面白さが見えてくるのではないだろううか。実写ドラマの原作になってもよさそうな作品でもある。
 

本棚の旅■反逆児/松森 正(原作・東 史朗)

書 名/反逆児
著者名/松森 正(原作・東 史朗)
収録作品/反逆児・第一話~第六話
発行所/日本文芸社
初版発行日/昭和55年7月25日
シリーズ名/GORAKU COMICS

 本書は松森 正の単行本のなかでも知られていないもののひとつではないかと思う。同じ「ゴラクコミックス」からは『ルートゼロ』『愛の伝説』などが刊行されているが、『ルートゼロ』以外のものは早い段階で絶版になっていたように思う。
 刊行は昭和55年だが、第一話では学生運動が舞台となっていたりして、60年代末から70年代初頭の物語に感じる。とはいえ明確に舞台となる年代は語られていないので、その当時に発表された作品なのかもしれない。
 主人公は学生運動には反対する立場で学内に立てこもり(大学ではなく高校ですが)、結果的に学校を追われる形で放浪の旅に出る。その中で出会う人々とのエピソードから、自分の出生を追う形でストーリーは進行していく。
 カバーイラストでは主人公が片手に手錠をかけた状態で竹刀を振りかぶっていることもあって『男組』的な印象もあったりする。最終的な父親に関するエピソードはもっと膨らませることもできたように思うのだが、そうなったらますます『男組』的な展開になっていたかもしれない。
 画的には『ライブマシーン』以前の描き込みの多いものだが、当時の劇画はだいたいこういうものだった(大友克洋以前)。
『湯けむりスナイパー』は多くの読者を得たが、その他の松森作品はいまだ埋もれた状態であるのが大変残念である。本書のような作品もどこかで再刊してくれないだろうか。

本棚の旅■ルート・ゼロ/松森 正(原作・但馬弘介)

書 名/ルート・ゼロ
著者名/松森 正(原作・但馬弘介)
収録作品/追いついた過去、待っている女、流れ星ふたたび、雨の訪問者、ある愛の詩、赤いハンカチ
発行所/日本文芸社
初版発行日/昭和55年1月10日
シリーズ名/ゴラク・コミックス

「ルート・ゼロ」というレストラン(というかファミレス的な店)とその経営者夫婦を中心にしたシリーズ作品。
 松森のゴラク・コミックス作品としては比較的流通していたもののひとつだと思う。
 70年代前半の代表作を『木曜日のリカ』『まんちゅりぃぶるうす』とすれば、後半の代表作としてこの『ルート・ゼロ』をあげることもできるだろう。
 内容自体はどこにでもあるような日常的なものというよりは、ドラマティックな事件によって登場人物たちの心情を描いていくものだが、各エピソードごとにラストは清々しい印象を与えるものになっている。
 主人公夫婦のひとり、光子のキャラクター(画)はほかの松森作品とはちょっと印象の違う物になっているのも特徴である。強いて言えば『薔薇のレクイエム』の美鬼に近いかもしれない。ちなみにマスターは『ライブマシーン』の主人公の原型といった雰囲気である。
 設定自体は長期連載にもなりそうなものだっただけに単行本1冊で終わってしまっているのは残念だ。できればリメイクなり続編なりを描いてもらいたい作品である。
 原作の但馬弘介は、調べてみると編集者の夜久 弘であった。なるほど日本文芸社には縁の深い人物ではある。松森とはほかに『新宿25時』などの作品がある。
 

本棚の旅■テキサスの鷹/松森 正(原作・橋本一郎)

書 名/テキサスの鷹
著者名/松森 正(原作・橋本一郎)
収録作品/テキサスの鷹・Vol.1~Vol.10
発行所/双葉社
初版発行日/昭和52年12月20日
シリーズ名/アクションコミックス

「狙った敵は必ず刺す」特捜検事、通称テキサスの鷹。
 以前紹介した『薔薇のレクイエム』の男性主人公版とも言うべき本作、改めて読み直してみてその印象を強くした。検事という公的な立場と非合法なスナイパーの違いはあっても、ストーリー上どちらを主人公にしても成り立つようなものが多い。
 本作では第1話冒頭から、日本進出を企むマフィアが、日本支部総支配人として主人公をスカウトするシーンから始まっており、検事とはいってもかなりキワドイ捜査をしてきたのだろうことは想像できるわけだけど、その話を飲むカタチで潜入捜査にはいり、マフィアの幹部が来日するタイミングで全員を殺してしまうという検事にあるまじき行動に出たりもしている。こんな展開、『薔薇のレクイエム』でも十分描けるだろうし、むしろその方が無理はないような気がする。
 また、マフィアにしろその他のエピソードで登場するゲストキャラクターにしろ、なぜか外人が多かったりして、日本の特捜検事なのになあ、と思ったりする部分もある。
 画的には渡 哲也(というか『西部警察』?)を意識したと思われる主人公・鷹はずいぶん血の気の多い性格になっている。松森作品の主人公としては珍しいタイプかもしれない。
 本作は後年『餓狼の森』などと一緒に松文社の「エースファイブコミックス」で再刊行されているが、その際オリジナル版の5、6話をカットした8話で構成された。5話にはかつての恋人ヘレンが、6話には現在の愛人が登場しているので、この2話をカットしたのは残念な気もする。
 これは個人的な思いつきにすぎないが、鷹と『薔薇のレクイエム』の美鬼が組んだストーリーなんて言うのもあっても面白かったのではないだろうか。
 後年、スタジオシップから『特殺管』のタイトルで再刊行された。
 

本棚の旅■薔薇のレクイエム/松森 正(原作・橋本一郎)

書 名/薔薇のレクイエム
著者名/松森 正(原作・橋本一郎)
収録作品/薔薇のレクイエム(1~4話)、新・薔薇のレクイエム(1~5話)、薔薇のオラトリオ
発行所/サン出版
初版発行日/昭和56年12月1日
シリーズ名/ジョイコミックス

「別冊アクション」に『死神カーニバル』として発表された4話を『薔薇のレクイエム』、「増刊ヤングコミック」に『新宿警察』として発表されたものを『新・薔薇のレクイエム』として、また「週刊漫画アクション」に『鉛の喪章』とし発表された女性主人公の独立した短編を『薔薇のオラトリオ』として収録した一冊。
『薔薇のレクイエム』の主人公、美鬼は同じ松森 正の『テキサスの鷹』を女性に置き換えたようなハードボイルド作品だが、第1部では『木曜日のリカ』が成長したような容姿であり、第2部になると映画『女囚さそり』シリーズや『修羅雪姫』に主演した梶芽衣子を意識したような容姿になっている。
 自らを抹殺屋と名乗り「刑殺官」とも言っているあたり『テキサスの鷹』に印象がダブるのだが(ちなみに「テキサス」は「敵を刺す」からきている)、松森 正作品としてはやはり『木曜日のリカ』からの流れとして捉えるのが自然だろうし、劇画の師匠である佐藤まさあきの『銀猫』を意識しているとも受け取れる。
 ところでこの作品には原作者がいる。橋本一郎と松森 正はけっこうコンビを組んでいて70年代半ばの松森作品には欠かせない原作者だったという印象がある。調べてみると橋本はマンガ雑誌の編集者であり、朝日ソノラマの「サンコミックス」を立ち上げた人物でもあった(「サンコミックス」にはもうひとり、「マンガ少年」編集長の原田氏も立ち上げに関わっている)。
 この単行本のシリーズにも触れておくと、サン出版の「ジョイコミックス」は官能劇画専門の単行本シリーズで、基本的にサン出版の官能劇画誌掲載の作品をまとめていたのだが、毎月4~6点の刊行ということで他の出版社の作品や官能劇画とはいえない本作のようなものもシリーズに含めることがあった。官能劇画を語る上では外すことのできないシリーズであるとともに、劇画史を語る上でも忘れてはならないシリーズあるだろう。
 松森作品に話を戻すと、本作のあとさらに洗練された松森のタッチは『ライブマシーン』で結実していき、『湯けむりスナイパー』につながっていく。この『薔薇のレクイエム』はまだ過渡期の作品といってもいいと思うが、松森作品としては完成度が高いわりに知られていないのが残念だ。
 後年スタジオシップから『レディーコップ』というタイトルで、内容を再構成して刊行された。

« 2011年6月 | トップページ | 2012年3月 »

2020年7月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31  

最近のトラックバック

無料ブログはココログ