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2012年3月

■新宝島/手塚治虫(原作・構成/酒井七馬)

初出/育英出版・書き下ろし単行本(昭和22年)
書誌/育英出版(昭和22年)
   ジュンマンガ(1968年)
   講談社(手塚治虫漫画全集・1984年10月3日初版)
   小学館クリエイティブ・小学館(2009年3月4日初版)

 本作は現在の日本に於けるコミック文化の原点とも言われるもので、この作品により刺激を受けた多くの漫画家、アーティストがいる。その代表的な例が石森章太郎や赤塚不二夫、藤子不二雄といった「ときわ荘グループ」だろう。
 一般に、本作発表以前の漫画は挿絵的なものが多く動きが感じられないと言われ、本作の映画的な躍動感が、読者に衝撃を与えたといわれている。これは現在の漫画を読んでいる読者にはよく理解できないものかもしれないし、リアルタイムで本作に触れた読者の衝撃というものを感じてみたいという気もする。藤子不二雄Aは冒頭のシーンから、その演出、作画に映画のようなスピード感や躍動感を感じたといくつかの著書などで告白している。確かにいま読んでみても違和感のないその画面は現在の漫画作品と同じといっていいのかもしれない。
「ときわ荘グループ」の漫画家たちをはじめとして多くの漫画家やアーティストによって、その衝撃が語られる反面、ボクら世代(もうけっこういい年)ですら本作を読む機会というのは全くと言っていいほどなかった。つまり噂だけが、イメージだけが先行した形でこの作品の素晴らしさをインプリントされてきたと言っていい。
 そんな中でようやく読むことができたのは、講談社の手塚治虫漫画全集に収録された本作だった。が、これは当時の原稿を使用したものではなく、また内容も含めて書き直された手塚治虫オリジナルの『新宝島』だった。
 多くの漫画家たちなどに影響を与えた本作は、じつは作者である手塚と酒井の合作であり、そのふたりの間でトラブルもあったことから育英出版版の再刊行、復刻というものが長くなされることがなかったのである(またここには当時の出版状況に起因する「描き版」という問題もからんでくる)。育英出版以後唯一復刻(トレスであったが)を試みた「ジュンマンガ」もそれ自体があまり知られる存在ではない。そして刊行から60年。ようやくわれわれはオリジナル版の『新宝島』を読む機会を小学館クリエイティブの復刻版によって得たのである。
 ストーリーは、主人公のピート少年が家の中で発見した地図をもとに、知り合いの船長と共に宝探しを敢行しようと相談していると、その地図を奪いに海賊が現れ、ピートと船長は捕らわれてしまうが、嵐により海賊船が難波し、海に放り出されどこかわからない島に漂着する。が、その島こそが地図に記されていた宝島であり、ターザンのような人物や海賊たちも再び登場しての活劇が始まる。手塚自身は「宝島」と「ロビンソン・クルーソー」、そして「ターザン」をミックスしたような作品と評していたようだが、まさにその通りの作品といっていい。
 先述したように現在の目で見ても、基本的な部分で現在の漫画作品との違和感は感じられない。作画面やコマ運びは当然発表当時の時代的なものを感じるが、キャラクターの動きやセリフまわし自体は確かに現在の漫画作品の原点と言っていいものだろう(もっとも比較対象が下手をすれば戦前の漫画作品だったりするので、本当にこの作品が現在の漫画作品の原点となったというのはシンボル的な意味にすぎないのかもしれないのだが)。
 繰り返しになるが、リアルタイムで本作の最初の単行本を手にした読者たちにとって衝撃的な作品であり、バイブル的な意味合いも持っていたというのは、事実であり本作によって漫画の面白さ、漫画制作に目覚め、のちに人気作家になっていた漫画家たちの数の多さを考えれば現在の漫画作品の原点ということも事実であろう。その意味で漫画ファン、漫画マニアを自認する者であれば1度は読んでおくべき作品といえるし、日本のコミック文化を語る上では避けて通れない作品であることも事実だ。
 しかしながらそ本作の成立過程には現在も不確かな部分があり、中野晴之や竹内オサムらによって研究されてもいる。個人的にはその知名度や存在意義に反して長い期間一般的に読むことができない状態だったことが最大の問題だと思うのだが、現在ではこうしてオリジナルの本作を読むことができるようになった。これからの読者は幸せである。

 さて、講談社版全集ではオリジナル版を改めて手塚自身が描き直したわけだが、その違いについても触れておく。
 ストーリーの大筋はオリジナル版のままであるが、オリジナル版のコマ割りが1ページ3コマであったのを4コマにし、左右の幅を狭くして映画のフィルムのような印象を与えている。要所要所でオリジナル版にはないコマを挿入して、より動きのあるコマ運びになっているのも「映画的」といわれたオリジナル版の印象を強めるためだろう。そして最大の違いはオリジナル版のラストシーンのあとに10数ページのオチが付け加えられている点だ。オリジナル版では当初手塚が作ったものを、60ページほどカットして最終的な形にしたとされているのだが、この全集版のラストは当初手塚が考えていたものだったようだ。もちろん全集版のラストも悪くないのだが、オリジナル版の方が夢のあるラストになっていたように感じる。未読の方はぜひ両方を読み比べていただきたいと思う。

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■銀色の髪の亜里沙/和田慎二

初出/別冊マーガレット(昭和48年4~5月号)
書誌/マーガレットコミックス(1973年11月20日初版発行)
   集英社漫画文庫(1977年)
   花とゆめコミックス


 和田慎二といえば『ピグマリオ』や『超少女明日香』といった代表作があるが、なんといってもテレビドラマ化もされた『スケバン刑事』で知られているだろう。
 とはいえ『スケバン刑事』以前の和田の代表作といえば、この『銀色の髪の亜里沙』だったといって間違いはない。
 13歳で、親友だと思っていた仲間の少女3人に洞窟につながる穴に落とされ殺されかけた主人公が、数年ののち地上に戻って復讐を遂げるという、ある意味少女漫画らしくないストーリーではあるのだけれど、わかりやすいセリフまわしと構成力で読みごたえのある作品に仕上げてある。元ネタは江戸川乱歩の『白髪鬼』やデュマの『モンテ・クリスト伯』あたりになるのだろうが、それを知っていたからといってこの作品がつまらなくなるということもない。
 この当時「別冊マーガレット」では本作のような、恋愛もの以外の作品を掲載していたことが多かったような印象も強い。和田自身本作以外にもミステリー調の作品を多く描いていたし、河あきらも社会派的な作品を発表していた。結果的にこの流れは和田の作品としては『スケバン刑事』につながっていくのだが、少女漫画全体としては、数年後にブームとなる「乙女チック路線」によってミステリー調の作品は影を薄くしていく。小説と違って少女漫画からミステリーの女王と呼べるような作家が現れなかったのもその原因かもしれない。

 亜里沙はその後『怪盗アマリリス』にも登場しているようだが、確認はしていない。また本作のタイトルは実にインパクトがあって魅力的なのだが、作品本編で銀色の髪があまり活かされていなかったような気がして少々残念な気もする(復讐に際して正体を隠すということ以外に)。

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■呪われた孤島/和田慎二


初出/集英社・別冊マーガレット(昭和49年8月~9月号)
書誌/集英社・マーガレットコミックス(1975年3月20にち初版発行/怪盗アマリリス併録)
   大都社・スターコミックス(1993年2月)

 日本海にあるとある島では、医者がいないことで島民が長年苦しんできていた。そしてついにその島に診療所を開くという女医がやってきた。島をあげての歓迎を受け、女医は仕事を始めるが、しだいにその本性を現し、ついには自分の欲望を満たすために邪魔な島民を毒グモを使って殺し始める。
 主人公・曜子の父で島の網元でもある剛三もその犠牲者のひとりになってしまった。確かな証拠がないまま、それでも横暴な報酬を要求する女医に対抗するため、島民達は剛三の意志もあり、曜子を東京の医大へと送るのだった。
 そして時は過ぎ、東京の医大で知り合った間久部という青年と共に、曜子は島に戻ってくるのだった。
『銀色の髪の亜里沙』同様の復讐劇と言っていいのが、この『呪われた孤島』だ。それにしてもこのタイトル、いささか仰々しすぎる気がしないでもない。タイトルだけから受けるイメージとしては秘境モノではないだろうか。また「呪い」といってもオカルト的なエピソードがあるわけでもなく、島の伝説が出てくる程度(この伝説に語られる八千代菊が物語の重要なカギではあるのだけれど)。
 前編・後編として描かれた本作は、前編では女医が島にやってきて、曜子が島を脱出するまでを描き、後編では東京の医大での生活と女医への復讐が描かれていて、内容も構成も充実した作品になっている。
 曜子と間久部のロマンスもあるにはあるが、ストーリー上はほとんど語られることはなく、ラストでふたりが婚約したことがセリフで触れられている程度。相変わらず少女漫画のお約束は無視している和田慎二である。
 この時期『超少女明日香』の第一作も発表しているので、和田慎二の作家としての充実ぶりも感じられる作品といえるだろう。

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■愛と死の砂時計/和田慎二

初出/別冊マーガレット(昭和48年8月号)
書誌/マーガレットコミックス(1974年4月20日初版発行)
   MFコミックス(2000年1月31日初版発行/神 恭一郎の事件簿1)

 孤児で奨学金で高校に通う杳子(ようこ)は、担任教師でもある保本 昇との結婚式を前日に控えてクラスメイトから祝福の言葉を浴びているときに、昇が殺人罪で逮捕されたと知らされる。違例ともいえるスピード結審で昇の死刑が決まり、絶望のどん底に落とされた杳子の前に、昇の逮捕にも立ち会った私立探偵・神 恭一郎が現れるのだった。
 昇の無実を証明しようと杳子と恭一郎、そして協力するクラスメイトたち。しかし証人となるはずの人々はつぎつぎと死んでいってしまう。死刑執行まで残された時間はわずか…はたして杳子たちは昇の無実を証明できるのだろうか。
 教師と教え子のラブストーリーという展開はすでに終わっていて、いよいよ結婚式というところから始まり事件に巻き込まれるという、本作でも少女漫画らしくないストーリーを展開する和田慎二。もっともそれが新鮮だったともいえるだろう。また『スケバン刑事』に登場する神 恭一郎が活躍する作品としても、ファンなら押さえておきたいものだろう。ちなみに本作が神 恭一郎の初登場作品となる。
 タイトルだけを見ると難病ものという印象もあるが、刻々と迫る死刑執行までの時間を砂時計に例えている。和田は印象的なタイトルをつくるのがうまいのかもしれない。ちなみに神 恭一郎が再び登場する作品のタイトルは『オレンジは血の匂い』である。
 
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本棚の旅■フラッシュZ/石森章太郎

書 名/フラッシュZ・全2巻
著者名/石森章太郎
出版元/双葉社
判 型/新書判
定 価/各350円
シリーズ名/バワァコミックス
初版発行日/1巻・昭和46年12月20日、2巻・昭和50年2月20日
収録作品/1巻・フラッシュZ、番外編タイムパトロール、おれとおれ
     2巻・フラッシュZ、エスパイ

 本作は「まんが王」1960年8月号~1961年3月号まで連載されたもの。また番外編は「少年画報」1961年4月号に掲載された。
 ある日、大量の隕石が降ってきた。しかしそれは隕石ではなく宇宙人の侵略の始まりであった。それを予見していたように、アポロという名のロボットに命令して鬼のような宇宙からやってきた怪物を倒していく桃太郎少年。彼こそが本作の主人公フラッシュZである。
 桃太郎は、宇宙人が侵略目的であらかじめ地球に侵入させておいた自分たちと同じZ星人の子供のひとりであり、日本に配された子供はむかし話のように大きな桃の中から出てきたことから桃太郎と名付けられ育てられたのだった。そして侵略が始まるとZ星人の呼びかけにより世界各地から同じように地球でそだった宇宙人たちが集められ、侵略の手先となることを告げられる。しかし桃太郎はそんなZ星人の反抗し、ひとり闘うことを誓うのだ。もともとがZ星人であるためか、少年でありながらスーパーマシンやロボットを完成させることができた桃太郎ことフラッシュZは、地球人の丹波博士の協力を得て、Z星人が現れる1年前にタイムマシンで戻り、Z星人に対抗できるクロスマシンを完成させて、地球を守るのだ。
 半世紀前のSFコミック、と言ってしまえばそれまでだが、ストーリー構成や細部の設定はほころびが見えて、もっと面白い作品になったのではと感じさせるところがある。すでに作家としては多忙な時期に入っていた石森だったはずなので、時間をかけて仕上げることがかなわなかったのかもしれない。そして最終的に宇宙人の侵略は止まるのだが、主人公側の登場人物はすべて死んでしまうというダークな展開。もしかしたら無理やり終わらせたのかもしれない。作画面でも同時期に作品に比べて荒い印象もあり、正統派のヒーロー作品になる要素を持ちながら単行本化にも恵まれず不遇な扱いを受けることになったようにも思う。
 
 双葉社の「パワァコミックス」シリーズはタイトルは知られていながら単行本化されていなかったり絶版になって久しい作品を復刻してくれたり、漫画ファンにはうれしいシリーズだったが、この『フラッシュZ』、同じ石森の『王(キング)アラジン』もそんな作品だった。

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本棚の旅■気ンなるやつら/石森章太郎

書 名/気ンなるやつら
著者名/石森章太郎
出版元/虫プロ商事
判 型/新書判
定 価/240円
シリーズ名/虫コミックス
初版発行日/昭和43年5月30日
収録作品/気ンなるやつら

 本作品は「平凡」に1965年1月号~1968年6月号に渡って連載されたもの。初単行本は虫コミックスから刊行され、これは虫コミックスの第1弾だった。ちなみに虫コミックス版以後、朝日ソノラマ、双葉文庫、石森章太郎萬画全集、電子書籍と再刊行されたが、虫コミックス版のみ2話未収録となっている。虫コミックス版では、尾崎秀樹、北 杜夫両氏の解説が付されている。
 内容は気軽に読めるナンセンス調の青春コメディーといったもので、6ベエとマリッペというふたりを中心に、カミソリ、リス、ゴリラを含めた5人組が日常のさまざまな出来事や、時には事件に巻き込まれていく。6ベエとマリッペは隣同士の幼なじみで、屋根づたいに行き来する間柄。このあたりの設定はのちに『イナズマン』にも流用される。
 本作品は各話に扉がなく、タイトルを表記するために半ページほどのコマ(スペース)を使っている。このタイトル部分のイラストは毎回マリッペのファッショナブルな衣裳が印象的で、軽妙な内容と共に石森のセンスを感じさせる作品となっている。
 またコマ割りや内容にも実験的なものが見られ、『ジュン』とはまた違った意味での新境地だったのかもしれない。
 SFならば『サイボーグ009』、時代物なら『佐武と市捕物控』とそれぞれのジャンルで代表作のある石森だが、本作も青春コメディーの代表作であることは間違いない。機会があればぜひ読んでいただきたい作品である。
 
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本棚の旅■怪人同盟/石森章太郎

書 名/怪人同盟
著者名/石森章太郎
出版元/メディアファクトリー
判 型/A5判
定 価/1000円
シリーズ名/ShotaroWorld(015)
初版発行日/1998年3月1日
収録作品/怪人同盟(4話)、恐怖植物園(番外編)

『怪人同盟』は秋田書店の「冒険王」に1967年3月号~8月号にかけて連載された。また番外編の『怪奇植物園』は同誌1979年8月号に掲載された。単行本は当初1967年に、秋田サンデーコミックから1967年連載分を収録したものが刊行され、その後同単行本は1976年に秋田漫画文庫で文庫化された。この刊行年からわかる通り番外編は単行本刊行後に発表されたもので、単行本収録は今回取り上げたメディアファクトリー版が初収録となった。
 作品年表で見ると「少年マガジン」での『サイボーグ009』連載終了と同時に本作の連載がスタート、また同じ「冒険王」では5月から『009』の連載が始まっている。内容の割りに短命に終わったのは『009』復活の余波と見るべきとの本書解説の見方は正しいだろう。ちなみにこの解説では本作品の3人の主人公が持たされた超能力を『009』のメンバーに当てはめて、『サイボーグ009』を別の角度から描こうとしたと見ているが、ボクとしては機械的な改造ではないという作品中の記述から考えると、純粋に超能力を扱った作品として構想していたのではないかという気がしている。
 全体として主人公がごく普通の少年たちであり、ある日突然超能力を持ってしまったというところから、関わる事件も身近な殺人事件や誘拐事件が多い。3話では「ジキルとハイド」のように薬によって変身するというSF的なエピソードが描かれるが、むしろこれが例外といってもいい(このエピソードはモノクロアニメ版の『サイボーグ009』にも使用された)。何者かはわからないが3人の少年たちに特別な能力(変身、怪力、予知)を与え、3人はそれを地球人が試されていると感じる。このあたりの設定は平井和正・桑田次郎の『エリート』に通じるだろう。
 実は石森作品を最初に読んだのがこの『怪人同盟』だったと思う。秋田サンデーコミックス版を偶然手に入れ、その面白さにのめり込んだ。また普通このような能力を持った主人公たちを登場させればタイトルは「超人同盟」でもいいところを「怪人同盟」とした点に作者のセンスも感じてしまう。単行本カバーの表紙にも使われた大きくタイトルをデザインしたイラストも、崩れかけたコンクリートのような文字の印象が強く「怪人同盟」というタイトルの怪しさを引き立てている。
 ところで主人公の3少年のうち、特に主体となって描かれるのは変身能力を持った竜二だ。そう、その後描かれる「リュウ」シリーズにこの主人公も属していたのではないかと思うのである。

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本棚の旅■王(キング)アラジン/石森章太郎

書 名/王(キング)アラジン・全2巻
著者名/石森章太郎
出版元/双葉社
判 型/新書判
定 価/各350円
シリーズ名/パワァコミックス
初版発行日/1巻・昭和50年5月10日、2巻・昭和50年6月10日
収録作品/1巻・王(キング)アラジン(アラジンあらわる!、アラジンのランプとエネルギー・ガン、アラジンよ おれのどれいよ!、国立科学研究所、エネルギーガン いずこ)
     2巻・王(キング)アラジン、赤い魔神

 本作は「少年画報」1961年5月号~1962年3月号に連載された、石森章太郎の作品。同時期には代表作でもある『幽霊船』や名作『竜神沼』なども発表されている。
 内容は、石森章太郎が『鉄人28号』を描いたらこうなる、といったもので、ランプから現れる謎の巨人(実はラピア星人)アラジンとアラジンを自由に操ることのできるランプ、そしてアラジンにエネルギーを与える銃の奪い合いがストーリーの基本軸となっている。現代のフランケンシュタインとも言うべきマッドサイエンティストによって作られたロボット(人間の脳を使っているのでサイボーグというべきかもしれないが)も登場し、アラジンとの戦闘シーンも描かれている。このあたり、鉄人とブラックオックスという印象をどうしても受けてしまう。
 本作の時点で石森は、人間が宇宙人によって造られたものであるという設定を持ち込んでいる。また宇宙人たちの思惑から外れ、戦争を繰り返すロボット(地球人)を星ごと消滅させようということまで宇宙人は述べ、主人公の説得によって100年間だけ猶予を与えられることになるのだが、これは横山光輝の『マーズ』にもつながる印象を持った。
 ビジュアル面では初期のまるっこい絵柄が基本になっているがアラジンや、主人公の友人となる新聞記者など頭身の高いキャラクターも描かれ、過渡期といってもいいかもしれない。
 ちなみにアラジンのデザインをのちの『ゴレンジャー』の原型と指摘している人も複数いるようなのだが、作者的にはそういう思惑もなく、単純に考えられた物ではなかったかという気がする。あえていうならゴレンジャーのデザインが安易すぎたということではないだろうか。
 単行本は本書のほか、石ノ森章太郎萬画全集で刊行されている。

 2巻に収録された『赤い魔神』は「中学生の友一年生」1960年5月号~12月号に連載された作品で、火星人の侵略を描いたもの。似たような設定の作品が石森にはいくつかある。

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本棚の旅■Sπ(エスパイ)/石森章太郎

書 名/Sπ(エスパイ)
著者名/石森章太郎
出版元/虫プロ商事
判 型/新書判
定 価/240円
シリーズ名/虫コミックス
初版発行日/昭和43年6月25日
収録作品/Sπ(エスパイ)・全5話、ドクターSF・全2話、時間局員R・全3話、解説・尾崎秀樹

 小松左京に、映画化もされた『エスパイ』というSF小説があるが、本作とは無関係。タイトルから超能力を駆使してのスパイものという印象も受けるが、さにあらず。新発明・珍発明の武器でロボットスパイ組織「マッドマシン」と対決する「πナップル日本支部」の00五郎、00八郎、00ナナ子が主人公である。
 内容は特にコミカルなものではないが、各話のページ数が多くないことから気楽に読めるような軽いものになっている。「πナップル日本支部」は、どうやら東京都練馬区、石森邸の近所にあるらしい。
 本作はこの虫コミックス版でメインタイトルとして刊行されたほか、双葉社のパワァコミックス『フラッシュZ』第2巻にも収録されるなどしている。
『ドクターSF』はタイムトラベルをからめたある種の侵略SFもの。2話あるが同じ設定のストーリーをリメイクしている。かなり変えてあるので連続して読んでも飽きることはない。
『時間局員(タイムパトロール)R』はタイトル通りの時間をテーマにしたSF作品。本書に収録されたものの中では一番シリアスな作風でもある。
 本書は石森章太郎のSF作品を集めたという印象であるが、もうひとつ初出誌という点でも共通した作品群である。
『Sπ(エスパイ)』中一時代・昭和42年4月号~8月号
『ドクターSF』中二時代・昭和40年4月号~41年3月号
『時間局員R』中一時代・昭和41年4月号~42年3月号
 このように旺文社の学年誌に連載された作品群ということがわかる(ちなみに『Sπ』は中一時代のほかに「ビクトリー」誌昭和42年7月号~12月号という連載記録もある)。
 一般的な少年マンガ誌が、小学生を含めた読者を対象にしていたのと違って、特定の年代(この場合中学生)を対象読者にしていた点で、ちょっと大人な設定やセリフまわしがあってもよかったと思うが、本書に収録された作品を見る限り、少年マンガ誌に掲載された作品よりも分かりやすく読みやすい内容を、と考えていたようだ。基本的に「学習誌」というカテゴリーに入る掲載誌だったことで、気分転換になるようなものを目指したのかもしれない。

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本棚の旅■おお! わが愛しのマスク/山上たつひこ

書 名/おお! わが愛しのマスク
著者名/山上たつひこ
出版元/朝日ソノラマ
判 型/新書判
定 価/260円
シリーズ名/サンコミックス
初版発行日/昭和46年7月7日
収録作品/おお! わが愛しのマスク、うちのママは世界一、ホワイトクリスマス、あな恐ろしや、焼却炉の男、きざまれた疑惑

 本書は山上たつひこの4冊目の単行本でありサンコミックスから刊行されたものの1冊目にあたる。収録された作品と初出は以下の通り。

 おお! 愛しのマスク/別冊少年マガジン・1969年10月号
 うちのママは世界一/ビッグコミック・1970年2月25日号
 ホワイトクリスマス/1968年
 あな恐ろしや/ビッグコミック増刊・1971年2月1日号
 焼却炉の男/まんが王・1970年2月号
 きざまれた疑惑/デラックス少年サンデー・1969年10月号

 収録された作品のいくつかは双葉社の「山上たつひこ選集」などにも再録されている。
 本書の存在を最初に知ったのは、サンコミックス巻末の刊行リストでだった思う。すでに刊行から何年も経っていたので新刊書店の店頭には並んでいなかったのは当然だが、注文しても品切れになっていたのではないかと思う。本書と、同じ山上作品の『旅立て! ひらりん』は気になりつつも読むことのできない単行本としてその後数年が経過するが、友人の兄の蔵書にあるということで、借りて読むことができた(かなり膨大な漫画の蔵書があったのだが、その後とあるキッカケで大半を譲り受けることになる)。すでに『鬼面帝国』も読んでいたあとなので『がきデカ』以前のSF作品などが収録された本書をわくわくして手に取ったのをおぼえている。もっとも表題作の『おお! わが愛しのマスク』はSFと言っていいが、そのほかの収録作品はSFというよりは心理サスペンス的なものが多い。小学校の教師が受け持ちの生徒の作文を読んでいくという形で進行する『うちのママは世界一』など、ひねった演出、印象に残るラストの作品も多い。
 表題作『おお! わが愛しのマスク』は100ページの読みきり作品で、さまざまな伏線を敷いての読みごたえのある作品だ。
 主人公は4年前に初めて顔の整形手術を受け別人の顔になったあと、整形が趣味のように数百回と顔を変えてきたが、そんな趣味にも飽き本来の顔に戻ろうと、いつも手術を頼んでいるモグリの整形外科医を訪ねる。しかし元の顔の写真を自分でも持っていないと言い、医者が保管していた写真を探してみるのだが2週間前に入った空き巣に盗まれたらしいとわかる。どうやら主人公のいまの顔のモデルとなった人物に何か曰くがあり、主人公自身も命を狙われることになる。
 この主人公、そんな風にしょっちゅう整形で顔を変えるなど道楽三昧の日々を過ごしているが、それは親が残した莫大な財産があるため。しかも元をただせば祖父がどこからか3億円を持ってきたのが始まりだという。つまり作品発表当時話題となっていた3億円強奪犯人の孫という設定なのだ。これは本筋にはまったく関係のないエピソードなのだが、ちょっとしたお遊びにニヤリとさせられる。
 それにしても山上たつひこの発想力、構成力には改めて感心させられる。『がきデカ』や『喜劇新思想体系』もいいが、それ以前に描かれたシリアス系の短編作品ももっと気軽に読めるようになるといいのだが…。
 
 余談だが、本書刊行後朝日ソノラマからは『光る風(サンミリオンコミックス)』『旅立て! ひらりん(サンコミックス)』が立て続けに刊行される。山上は「朝日ソノラマさんにはお世話になった」とこの当時のことに感謝していたということである。

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■鬼面帝国/山上たつひこ

初出/講談社・少年マガジン(1969年6月29日号~7月6日号)
書誌/東考社・ホームランコミックス(併録/遺稿、良寛さま)
   秋田書店・サンデーコミックス(1976年4月30日初版、併録/ウラシマ、ミステリ千一夜、そこに奴が…)
   講談社・KCスペシャル(1987年10月6日初版、併録/2人の救世主、やってきた悪夢たち、石の顔、焼却炉の男、手紙、遺稿、地上(うえ)、故郷は緑なりき、白蟻)

『2人の救世主』で少年誌デビューした山上たつひこが『やってきた悪夢たち』に続いて「少年マガジン」に発表したのが本作だ。
 ストーリーは、崖から落ちて昏睡状態になったふたりの青年が地獄から脱出して生き返るまでを描いている。もっともその地獄の世界は一般的なイメージではなくSF的な味付けをされた現実世界とは別次元の異世界という設定になっている。
 最初の単行本である東考社版は発行年月日不明なのだが70年以前の刊行と思われる。ボクがこの作品を初めて読んだのは秋田サンデーコミックス版であった。当時はすでに「『がきデカ』の山上たつひこ」というイメージが出来上がっていたので本作のような作品もあるのだなという印象を持ち、『がきデカ』以前のSF作品をもっと読んでみたいとも思ったのだが、その当時はそういった作品がまとめられた単行本が新刊書店には並んではいなかった(せいぜいサンミリオンコミックスかソノラマ漫画文庫の『光る風』くらいだったと思う)。
 ここで描かれる「地獄」は先述した通りSF風味の異世界なわけだが、死んだ人間はすべて、まずこの地獄に送られてくる。自分では意識していなくとも何らかの罪を人は犯しているものだというキリスト教でいう原罪思想のような設定になっているのだが、その罪も果して罪なのかというところも描いている。地獄は鬼の種族が支配していて人間たちは奴隷のような扱いを受けており、鬼への奉仕など一定の評価が得られたものだけが極楽へと送られる。そこはすべてが平等な世界だというのだが、そのことへの疑問も主人公の言葉として山上は読者に投げかける。
 作品が発表された69年といえば、まだ学生運動も盛んで「少年マガジン」も劇画系作家を積極的に起用し、高校生や大学生にまで読者層を広げて行った時期でもある。思想的なテーマや哲学的なセリフまわしの作品も多く描かれた時期とも言える。山上たつひこも本作の後『光る風』を70年に連載することになる。もっとも本作は『光る風』のように重苦しるしさを感じずに読めるところがいい。
 山上たつひこというとどうしても『がきデカ』『喜劇新思想体系』などギャグ作品が取り上げられがちだが、本作のようなSF作品ももっと評価されてもいいのではないかと思う。

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本棚の旅■真夏の夜の夢/山上たつひこ

書 名/真夏の夜の夢
著者名/山上たつひこ
出版元/ひばり書房
判 型/新書判
定 価/320円
シリーズ名/ひばりコミックス怪談シリーズ(55)
初版発行日/1975年6月14日
収録作品/第1話・白蟻、第2話・ウラシマ、第3話・2丁目1番地恐怖団、第4話・土、第5話・十一階、第6話・青いリボン

 所持しているのは75年の発行で「初版」とも「重版」とも記されておらず発行日がひとつだけ記載されているのだが、調べてみると「72年初版」「73年初版」という記載をしている古書店ホームページや個人ブログがあり、重版の際に初版発行日の記載をしないまま刊行されていたようだ。もっともカパー袖部分の著者紹介文は75年当時のものと判断されるので強引に言えば「改訂版」なのかもしれない。
 収録されている6つの短編は本書のタイトル「真夏の夜の夢」のもと1話から6話とされているが初出はそれぞれバラバラな短編をまとめたものである。
・白蟻/少年サンデー・1969年8月31日号
・ウラシマ/月刊少年チャンピオン・1972年2月号
・2丁目1番地恐怖団/週刊少年チャンピオン・1972年4月
・土/少年サンデー・1969年8月31日号
・十一階/劇画マガジン・1967年12月号
・青いリボン/希望の友・1971年11月号
 初出は以上の通りで72年に初版が刊行されていたとしても頷ける。また75年が初版であれば『がきデカ』の人気にあやかる形での刊行と思っていたのだがそれもなかったようである(もっとも再刊行のキッカケや動機としては十分考えられるが)。
 山上たつひこといえば『がきデカ』や『喜劇新思想体系』といったギャグ作品で知られると思うが、個人的には本書に収録されたSFやミステリー系のシリアスな作品が好きだ。極端なことをいうと『がきデカ』以前の作品ということになるだろうか。その意味では本書は山上たつひこの単行本の中でもお気に入りの一冊といっていい。
 収録された作品の中でもっとも好きなのが『ウラシマ』だ。浦島太郎に弟がいたという設定や冒頭に描かれる巨大なウミガメなど内容的にもビジュアル的にもインパクトがあった。またラストもなかなかいい。収録された作品ではラストのひとコマ、最期のセリフ(モノローグ)にインパクトのあるものが多いのも特徴かもしれない。ちなみに『ウラシマ』は秋田サンデーコミックスの『鬼面帝国』にも収録された。またそのほかの作品も複数の単行本に再録されているものが多い。

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