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2012年6月

本棚の旅■いただきヤスベエ/水島新司(原作・牛 次郎)

書 名/いただきヤスベエ(全3巻)
著者名/水島新司(原作・牛 次郎)
出版元/朝日ソノラマ
判 型/新書判
定 価/各350円
シリーズ名/サンコミックス
初版発行日/第一巻・昭和49年10月7日、第二巻・昭和49年10月7日、第三巻・昭和49年10月7日
収録作品/いただきヤスベエ

 本作は、秋田書店の「少年チャンピオン」に1971年36号~1972年11号にかけて連載されたもので、単行本は朝日ソノラマの「サンコミックス」で刊行されたあと、講談社の「KCスペシャル」でも刊行されたようだ。
 初出の「少年チャンピオン」では、その後『ドカベン』が連載され水島の代表作となるわけで、野球漫画家というイメージとなる以前の作品といってもいいだろう。
 タイトルにもついてる「いただき」という言葉は、主人公とその周辺の登場人物たちがスリであるからだろう(本編ではただのスリではなく「かすみ者」という忍者のような流れを持つ一族という設定である)。とはいえ単にスリを主人公にした作品ということではなく、スリグループ同士の闘争がメインとなっている。主人公が属する白銀(しろがね)一族とかつては同じ一族だったが分派した黒十字組である。後半になるとさらに鬼政一家が加わり、3つのグループで東京・山手線のシマを奪い合うことになる。また3つのスリグループの中心人物、白銀一族のヤスベエに黒十字組の若、鬼政一家の鬼政に鬼刑事の異名を持つ立脇が登場し、スリの3人が立脇の警察手帳をスリ取るという勝負に挑む。
 原作の牛 次郎はビッグ錠とのコンビで『包丁人味平』や『釘師サブやん』などのヒット作があるが、突飛な設定や展開で楽しませてくれる原作者だ。本作でも影イタチという黒十字組のスリの武器が屁であったり、取り調べ中に容疑者を平気で殴り倒す鬼刑事だったりと、むちゃな展開でストーリーを盛り上げている。
 構成的には前半と後半の2部構成になっていて、前半はふたつのスリグループの埋蔵金をめぐる地図の奪い合いであり、後半は前述した通り縄張り争いである。ページ数的にも半々という分量になっていて、2巻の中程で後半となる。前半と後半のあいだでは数カ月の時間の経過があるのだが、その間にヤスベエは急激に成長していて、前半では子供っぽかった雰囲気が後半では青年のように描かれている。
 野球物以外の水島作品ということであまり話題になることは少ないが、エンタテインメントとしてよくできた作品でもあるので、読む機会があればぜひ手に取ってほしい。

※ヤスベエを逮捕しようと顔を会わせればヤスベエを追いかける定年間近の老刑事が登場するが、その名前は銭形。もちろん銭形平次の子孫という設定である。

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本棚の旅■ゴキブリ旋風/水島新司

書 名/ゴキブリ旋風(全2巻)
著者名/水島新司
出版元/ひばり書房
判 型/新書判
定 価/各340円
シリーズ名/ひばりコミックス
初版発行日/第一巻・1975年6月25日、第二巻・1975年6月25日
収録作品/ゴキブリ旋風(全3話)、闘魂

 本作は1970年に秋田書店の『冒険王』に連載されたもの。単行本はひばり書房の「ひばりコミックス」から全2巻で刊行されている(水島作品を紹介したサイトには単行本の発行を78年としているところもあるが、例によってひばりコミックスの奥付表記の問題であり、初版がいつかハッキリしない)。
 主人公は貧しい家の中学生男子で、その強靱な生命力からゴキブリとあだ名されている。そのゴキブリを目の敵にしているのが、PTA副会長の息子で風紀委員の座間。彼はカマキリと呼ばれている。1話はそんなゴキブリとカマキリの争いの中で、ゴキブリの生活する周辺の人間模様や、クラスメイトたちとの交流が描かれる。2話では怪我をし、瀕死の父親をゴキブリが子供の頃助けられた医院に担ぎ込み、いまは酒びたりとなっている院長の手術によって一命を取り留めるのだが、院長がのめり込んでいるボクシングの世界にゴキブリも飛び込むというもの(実は1話でもゴキブリの父は怪我をするのだが、2話ではその怪我の原因が違っているフシがある)。3話はゴキブリが同じ中学の女子バレーボールチームのコーチになって、一度も試合に勝ったことのないチームを大会で優勝させるというもの。ゴキブリのキャラクター自体は変わっていないと思うのだが、1話と比べるとまったく世界観の違う展開となっている。全3話ではあるが、同じゴキブリという少年を主人公にした独立したオムニバス作品という形で読むこともできる印象だ。
 2巻の巻末には『闘魂』というボクシング漫画が収録されているが、こちらの初出はわからなかった。

 水島新司といえば『ドカベン』や『野球狂の詩』といった野球漫画の印象が強いが、それらの作品を手がける前には本作のような青春ものや、スリを描いた『いただきヤスベエ(原作・牛 次郎)』そして『銭っ子(原作・花登 筐)』などの野球以外の作品がある。

※第1話にはバナナの叩き売り、見世物小屋や「へび女」などが登場し、風俗文化を知る一面もある。

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■性病部隊/園田光慶(原作・小池一雄)

初出/プレイボーイ(1971年3号~7号/※園田光慶作品のリストを作成しているサイトでは10号~さらに連載されている記述があるが、小池一雄作品のリストではそれはない))
書誌/大都社・ハードコミックス(昭和49年10月30日/初版には帯あり)

 なかなかセンセーショナルなタイトルで、自分も大都社のコミックスの巻末広告で本書のタイトルを知ったとき、どんな作品なのか好奇心が治まらなかった。が、すでにその当時入手困難で古書店でも見かけることがなく、半ばあきらめていたときに手に入れたものだ。
「THE ENDからの逃亡」というシリーズのもと『性病部隊』と『夕日の罠』という2話から構成されるもので、表題となった『性病部隊』は、CIAが培養した新種の性病に感染した男女ふたりのエージェントが、相手国に入り込み蔓延させるというもので、セックスシーンもふんだん。とはいえ71年当時の、青年劇画の枠の中でのことである。もちろんストリー自体はエージェントふたりの葛藤などシリアスなもので、シリーズタイトルにもあるように、「このままでは世界がTHE ENDとなってしまう」という危機感をあおっている。
 第2話である『夕日の罠』は「THE ENDからの逃亡」など、反戦歌で若者の人気を集めるシンガーを主人公に、その影響力を畏れた国防総省のエージェントが彼を陥れようと画策するというもの。
 どちらの話も小池一雄らしいといえばらしいもので、なかなか読みごたえのある作品だ。また園田もそれまでのダイナミックな作風にしっとりとした色気をプラスしたものになっているように思われる。
 タイトルがタイトルだけに復刻の機会がないのかもしれないが、作品としては多くの人に読んでもらいたい内容であり、手にする機会があったらじっくりと味わっていただきたい。

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■挑戦資格/園田光慶(ありかわ・栄一)

初出/東京トップ社(1962~1963年描き下ろし)
書誌/東京トップ社・ハードボイルド傑作集(全9巻)
   パンローリング・マンガショップシリーズ(全3巻)

 本作は、園田光慶が貸本作品を手がけていた時代に、ありかわ・栄一名義で発表したもの。本作を制作中に「少年キング」で『車大作』を連載し、雑誌にも進出することになり、結果的に1960年後半から描き下ろしを続けてきた貸本劇画の「ハードボイルド傑作集」シリーズを本作で終了することになったようだ。ちなみにこのシリーズは全26巻におよぶ。

 本作の冒頭で、主人公は記憶をなくしており、バーで知り合った猪又という老人の紹介でやくざが経営するクラブの用心棒となり、マシンガンの名手アゴの銀次と出会う。少しずつ記憶を取り戻していく主人公は、自分が早乙女 豪という名であったこと、アフリカから、現地で捕らわれている父を助けるため、人を集めるため日本に戻ってきたことなどを思い出していくが、やくざ同士の抗争のため、雇い主であった佐伯が殺され、アフリカへ戻る前に佐伯の仇を討つことになる。その間、怪力とブーメランのむっつりの牛や身軽さと爆発物を得意とする手品師の狂といったメンバーたちとも知り合い、ともにアフリカを目指すことになる。
 そう、のちに描かれる『ターゲット』が、まずアフリカを舞台にしていた下地がここにあったのだ。
 当初は反白人グループと考えられていたルムンバ団だったが(父も彼らに捕らわれている、と豪も信じている)、実は彼らは白人のグループであり、世界征服を企む集団だった。
豪の父などがアフリカで掘りあてようとしていた金を資金に、細菌爆弾などを製造し、世界征服に向けた計画を進めていたのだ。このあたりの設定も『ターゲット』に通じるところだろう。実際『ターゲット』はこの『挑戦資格』を別の形で描いたものだったのかもしれない。

 タイトルの印象だと、主人公が何かに挑戦するために次々にハードルを超えていくようなストーリーを想像するが、実際のところあまり的確なタイトルではなかったようにも思える。ストーリーの基本は主人公の、父の奪還(途中で死んだという噂を聞き復讐へと目的は変わるが)であり、ルムンバ団の正体が明かされるのも、主人公が仲間と離れているときに、仲間たちが知るという設定で、ルムンバ団に対する挑戦という形もあまり的確ではない。そしてそこに「資格」が必要になるわけでもない。
 また作画面では、中盤以降は気合も感じるが第一部あたりは貸本劇画らしいといってしまうと語弊があるかもしれないが、流して描いているような印象も否めない。描き込みも『アイアン・マッスル』ほど描き込まれていない印象であった。
 ただ、ストーリー展開は先を予想できないもので、どんどん読みたくなる勢いのあるものだ。
 貸本劇画として刊行され、その後は再刊行の機会もなく埋もれていたが、パンローリングのマンガショップシリーズで再刊行され、再び読むことができるようになった。貸本で読んだことのある読者だけではなく、貸本を知らない世代の読者にも一読を薦めたい。

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■ターゲット/園田光慶

初出/小学館・少年サンデー(1969年20号~1970年24号)
書誌/若木書房・コミックメイト(全5巻)
   徳間書店・トクマコミックス(全5巻)
   パンローリング・マンガショップシリーズ(全2巻)

『あかつき戦闘隊』で「少年サンデー」誌上で人気を博した園田光慶が、本領を発揮したともいえるハードボイルド・アクション劇画。ストーリーもオリジナルである。
 家庭も仕事も順風満帆で幸せの中にいた主人公・岩神六平は、出張先の福岡のホテルで両親と妻そして幼い息子が自宅で殺害されたという警察からの電話を受ける。急遽帰宅した六平に刑事は、犯人が六平の弟、徹二だと告げる。
 クレー射撃に凝っていた徹二が愛用していた銃で家族は射殺されていたのだ。
 はじめは信じられなかった六平だったが、いろいろと調べていくうちに徹二に接近していた人物を突き止め、その人物がアフリカのある企業の人間だとわかると、単身アフリカに飛ぶ。そしてアフリカで徹二の姿を見かけるも、六平は身に覚えのない殺人容疑で絶対に脱獄不可能はいわれる監獄の島「終身島」へと送られてしまう。そこは看守長であるヤコブという男が支配する地獄のような場所であり、徹二への復讐を誓う六平はなんとか脱獄しようと執念を燃やすのだが、そこで知り合ったジョンというジャーナリストの協力により処刑されたと見せかけて脱獄に成功。そしてジョンの紹介によって殺人マシーンへと六平を生まれ変わらせる「アザーワールド」に向かうのだった。

 六平の右手はナイフで切り裂かれるなど負傷していたが「アザーワールド」で治療を受けると同時に第2、第3関節にダイヤモンドが埋め込まれ、ただ殴るだけでも相当な武器となる。このダイヤを埋め込んだ右手というのが本作の主人公の特徴ともいえるのだが(家族惨殺のショックで白髪にもなっているが)、作品を読み返してみるとそれほど右手を使ってのアクションが描かれていないのが意外だった。
 また日本からアフリカ、一旦は「アザーワールド」のあるニューヨーク、そしてまたアフリカ、最後には日本へと舞台も変わり波瀾のストーリー展開ともなっているのだが、最終的に弟の徹二がなぜ両親と兄の妻、子供を殺すに至ったかの明確な記述はない。ヤコブの所属する犯罪組織に徹二も加わっているのだが、それだけが動機ともいえず、むしろ兄と弟の確執のようなものが背景に置かれていたようなのだが、結局そこまでは描かれなかったという印象だ。実際、全5巻で完結はしているものの犯罪組織の全貌についてはまるでわからず、家族を殺された復讐という、ストーリーの発端ですら半ば果たされないまま余韻を残しての終了となっている。
 まあ、正直なところ少年マンガ誌向きの作品ではなかったといえるし、青年誌で連載していたらさらに面白いものになっていたのではないという感じもする。結果的にそういったところでストーリーの完全な結末を描かずに終わったのではないのだろうか。

 単行本に関しては、若木書房のコミックメイトが初単行本(70年)。前作『あかつき戦闘隊』は小学館のゴールデンコミックスでも刊行されていたが、この時期すでにゴールデンコミックスの刊行が終わっていたかもしれない。コミックメイトはサンデー連載作品を多く単行本化していた。また本作は当初全4巻とされていたが、4巻、5巻の巻末に読みきり作品を収録することで全5巻という構成になっている。4巻で収録するには予定よりページ数が多かったのかもしれない。
 コミックメイトが事実上絶版となったあと、徳間書店から同じ全5巻で刊行されたが(85年ころ)、いまこの版はネット上でも確認ができない。実はレアな版になっているのかもしれない。
 現在入手できるのはマンガショップシリーズの全2巻で、これはコミックメイト版を底本としている。連載中の扉など未収録ページが多数あるという指摘もある。また電子コミックスでも発売されている。

※本原稿執筆にはコミックメイト版を読了し、マンガショップ版を参考にしました。

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本棚の旅■喪服紳士録/園田光慶

書 名/喪服紳士録
著者名/園田光慶
出版元/若木書房
判 型/新書判
定 価/240円
シリーズ名/コミックメイト
初版発行日/昭和46年7月15日
収録作品/喪服紳士録・9話

 本作『喪服紳士録』は、園田光慶が1968年に「ヤングコミック(少年画報社)」に連載した作品で、青年マンガ誌に進出した最初の作品でもある。
 青年コミック誌は、青林堂の「ガロ」に端を発して、貸本劇画作家を多く起用した、少年マンガ誌とは一線を画す存在として創刊され、小学館の「ビックコミック」、少年画報社の「ヤングコミック」、双葉社の「漫画アクション」、日本文芸社の「漫画ゴラク」とその数が増えていった。もともと少年漫画という小中学生が主な読者対象だった週刊マンガ誌よりも上の世代に向けて描かれていたきらいのある貸本劇画の作家を積極的に起用していったのは当然のことだろうが、本作でも園田作品の雰囲気は貸本作品時代の意気込みが感じられる。
「喪服紳士録」とは、殺人請負業、つまり殺し屋のリストである。本作はそういった殺し屋を主人公にした連作になっていて、それぞれ読みきり作品としても楽しめる。唯一「完全紳士」と呼ばれる主人公だけが2度登場している。
 また本作では『アイアン・マッスル』で見せたような派手なアクションは抑え気味で、むしろストーリーに凝った作品という印象が強い。殺し屋そのものに関するストーリーもあり、請け負った仕事に関してのストーリーもあり、少年漫画ではなかなか扱えなかったテーマやストーリー展開を思う存分試しているという雰囲気すらある。
 正直、園田作品はそれ程の数を読んでいないのだが、本作は個人的に園田光慶のベスト作品という印象がある。絵的にもストーリー的にもバランスの取れた作品といってもいいかもしれない。
 ちなみに、本作品の単行本は現在のところこの若木書房の「コミックメイト」版しかない(貸本時代に本作の元となった『喪服紳士録』及び『完全紳士』という作品があるが、本書に収録されたものとは別物)。個人的な印象として非常にレアな単行本であり、もし見つけることがあったら迷わず入手すべきと思う。

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