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2012年12月

本棚の旅■川崎のぼる傑作漫画集

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書 名/川崎のぼる傑作漫画集
著者名/川崎のぼる
出版元/講談社
判 型/新書判
定 価/280円
シリーズ名/KCコミックス
初版発行日/昭和48年10月20日
収録作品/浪人丹兵衛絶命、百笑亭イモ助、野生馬ハクライ号

 川崎のぼるというと『巨人の星』『荒野の少年イサム』『いなかっぺ大将』『てんとう虫の歌』といった長編作品が思い浮かび、短編作品にこれといった代表作が見当たらない印象があるのだが、本書のタイトルはそんな印象を裏付けているようだ。
 すでに『巨人の星』も完結して『てんとう虫の歌』を連載中の時期に刊行された思うのだが、作品タイトルを表題として単行本のタイトルにするよりも「川崎のぼる」という作家の名前の方がセールスが見込めると考えたのだろう。
『浪人丹兵衛絶命』は人のいい浪人を主人公にした時代劇、『百笑亭イモ助』は『いなかっぺ大将』の大左ェ門を大人のしたような噺家の卵の物語、『野生馬ハクライ号』は北海道の牧場を舞台にした馬の登場する物語だが、川崎作品初期の西部劇の匂いも感じる。
 ストーリーの読みごたえ、作画の充実感、それぞれ作者が充分に力を注いでいる印象があり、まさに「傑作漫画集」といえる内容なのだが、それだけにそれぞれのタイトルが独立して川崎のぼるの代表短編作という位置にないのが残念でもある。
 川崎は自ら「劇画家」と名乗ってもいたが、劇画とマンガを融合した中間的な印象が個人的には強い。雑誌に進出したのが早かったことがそういう作風の確立を後押ししたのだと思うが、同時に年少者の読者を意識した作品が多かったことも劇画的マンガに向かった理由なのかもしれない。

本棚の旅■ふきだまり/川崎のぼる

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書 名/ふきだまり
著者名/川崎のぼる
出版元/オリオン
判 型/新書判
定 価/350円
シリーズ名/Pocket Comics
初版発行日/1976年5月10日
収録作品/ふきだまり(秋田書店「週刊少年チャンピオン」1970年6号~12号)
     ある浪人の死(虫プロ商事「COM」1967年11月号)
     悪魔博士(初出不明)

 この単行本はオリオン出版から刊行された「ポケットコミックス」というシリーズの一冊にあたるのだが、オリオン出版というのはスタジオシップが一時使用していた出版社名。この単行本と同時期には少女マンガを多く刊行していた(牧野和子やのがみけいといった作家の作品が印象深い)。
 自動車会社社長の息子とその使用人の息子とが親友として仲良くつき合っていたが、あるきっかけでし子調の息子が怪我をしてしまい、その原因が使用人の息子だったことから、社長の陰湿な復讐が始まり、使用人と息子は将来の夢を絶たれ、仕事もなくしドヤ街へと流れていった。それから3年。すっかりすさんだ生活に馴染んでしまった使用人の息子は、社長宅のお手伝いだった女性と再会し、社長の息子もその後の生活を心配していたと知る。
 そしてドヤ街で出会った中年男性に「ドヤ街の上辺だけを見ているからだめなんだ」と諭され、ドヤ街にも将来の夢を抱いて生きている若者がいることを知る。
 お手伝いの連絡で社長の息子もドヤ街で再会し、同時に家を飛び出し使用人親子と生活を共にするのだった。
 ドヤ街を舞台にした人情ドラマであり、川崎のぼるらしい作品と言っていいだろう。
『ある浪人の死』はある浪人がひとりの少女と出会い、旅路を共にする話。『浪人丹兵衛絶命』に印象が似ている。掲載誌を意識したのか、コマ割りや表現が他の川崎作品とちょっと違っているような気もする。
『悪魔博士』はミステリー作品。夜汽車の中から始まる展開はいいのだが、中盤、ラストとどうにもわかりにくいところがあり、謎の解決についても犯人の手紙を読むという安易なものになっている上に手紙の内容自体がわかりにくいという、川崎のぼるにしては隙のありすぎる作品だった。絵柄的にも初期の作品と思えるが、制作に時間がかけられない状況だったのかもしれない。

 個人的にこの単行本は、川崎作品の一冊として記憶に残っているもののひとつなのだが、一般的にはオリオン出版、ポケットコミックス共にレアなものになるのではないかと思う。

本棚の旅■死の砦/川崎のぼる

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書 名/死の砦
著者名/川崎のぼる
出版元/朝日ソノラマ
判 型/新書判
定 価/240円
シリーズ名/サンコミックス(SCM-18)
初版発行日/昭和42年12月5日
収録作品/保安官志願、黒い荒野、西部の挑戦者、最後の決闘、荒野の群盗、泣き館、死の砦

 朝日ソノラマ「サンコミックス」の初期は帯が付いていたりカラー口絵が付いていたりするが、本書も帯、口絵、解説(映画監督・岡本喜八)などが付いている(ちなみにシリーズ最初期のものには紐のしおりも付いていた)。
 本書は川崎のぼるの西部劇作品を集めた短編集。冒頭の『保安官志願』の主人公はチャリーといい、『大平原児』シリーズの一本になるのかもしれない。
 昭和30年代後半から40年代にかけてはテレビ・映画でも西部劇が人気であり、日本映画でもいわゆる「無国籍映画」と呼ばれる和製西部劇が人気を博していたので、マンガ・劇画の世界でもその影響を受けて西部劇が描かれたことは間違いない。とはいえ川崎のぼるほど巧みに西部劇らしい西部劇を描いていた作家はいなかったのではないかとも思える。本書に収録された各短編を読んでみても、その印象は強くなるばかりだ。
 登場する主人公たちはたいてい早撃ちの凄腕ガンマンで、アウトロー(無法者)であっても正義感がある。決闘シーンなどもほぼ全話に登場し、射撃のシーンも頻繁なのだが、ストーリー重視の姿勢なのか、銃器そのものへのヴィジュアル的なこだわりはあまり感じられないのも川崎西部劇の特徴といえるかもしれない。もっとも本書の場合、各話の扉ページでは銃がていねいに描かれてはいる(そのため、作品の扉自体は未収録になっている可能性が高い)。
 川崎のぼるの西部劇だけを集めた作品集などもあってもいいように思うが…どなたか企画してくれませんか?

本棚の旅■大平原児/川崎のぼる

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書 名/大平原児
著者名/川崎のぼる
出版元/秋田書店
判 型/新書判
定 価/240円
シリーズ名/秋田サンデーコミックス
初版発行日/昭和45年10月10日
収録作品/大平原児・無法者の道の巻
       〃 ・死の街道の巻

 本作は「少年ブック」に掲載された川崎のぼるの西部劇作品。初期の川崎は西部劇ものが多く、それはやがて『荒野の少年イサム』へとつながっていく。
 ちなみに本書には「第一巻」の表記があるのだが、第二巻以降の刊行は確認できていない。また再刊行された気配もないので、単行本未収録部分もあるだろう。
「大平原児」というタイトルで、チャリーという同じ主人公が登場するシリーズ作品ではあるが、エピソード自体は独立した作品としても読める。設定は南北戦争当時のアメリカだ。
 主人公のチャリーは、銃の腕は確かだが自ら「無法者」を自認していて、正義の見方というわけではない(もちろん世の中に為に…という行動も見せるので、正義感がないわけではないが)。このあたり、劇画家と呼ばれ、劇画作品を手がけてきた川崎らしい設定といえなくもない。また、2話目のエピソードでは無法者から宿無しに表現が変っているところを見ると、当時の雑誌に於ける主人公の設定の制限も感じられたりする。
 ビジュアル的には『荒野の少年イサム』あるいは『巨人の星』と比べると描き込みが少ないように思え、部分的に貸本劇画的な描写と感じられるものもあったりして興味深い。特にアクションシーンでは、劇画チックと言ってもいい描写になっていると言えるだろう。
『巨人の星』という有名すぎる作品があるためにその他の作品に光があたりづらい川崎のぼるであるが、劇画とマンガの長所をうまく融合させていた作家だという印象が強い。今後再評価の機会があって然るべき作家のひとりだと思っている。

本棚の旅■キャプテン五郎/川崎のぼる

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書 名/キャプテン五郎
著者名/川崎のぼる
出版元/小学館
判 型/新書判
定 価/240円
シリーズ名/ゴールデンコミックス
初版発行日/昭和43年8月10日
収録作品/キャプテン五郎(その1~その5)
    誓いの1
    本塁死守

 メルヴィルの『白鯨』を下敷きにしたと思われる表題作のほか、王貞治を主人公にしたもの、高校野球の2短編を収録したものが本書である。
『キャプテン五郎』では、父と兄を、「シルバーキング」と呼ばれる大アカエイに殺された少年・五郎が、復讐のためにアカエイに挑む姿が描かれる。父が死んだときに同じ船に乗っていて、片目を失った大和という船長の船に密航し、船乗りとして成長していく姿も描かれる。
 クジラがダイオウイカと闘うことが知られているように、本作ではシルバーキングが大ダコと格闘するシーンも描かれている。
 川崎のぼるというと暑苦しいまでの人物描写が得意な印象なのだが、本作でもコック長と五郎の疑似親子的な愛情や、謎の船員ジョーとの疑似兄弟的な愛情が描かれている。
 タイトルに着けられた「キャプテン」は船長を意味するものだと思うが、五郎が船長あるいはそれに代わる立場になることは無く、単に語呂の良さで決定されたと考えられる。また兄とふたり兄弟の主人公の名前がなぜ「五郎」なのかもよく分からなかったりする。
『誓いの1』は東京近郊の球場でボールボーイのアルバイトをしている少年が、試合でやって来た王 貞治と出会うところからストーリーが始まる。王と同じ左で背番号1、ファーストで四番バッターというふたりは意気投合して、友情が芽生えていく。
『本塁死守』は野球部の紅白試合のとき、ホームスチールをした主人公のために腕を怪我をし、野球ができなくなった正捕手に変って、主人公が捕手として成長していく姿が描かれる。ちなみに、主人公はどう見ても『巨人の星』の飛雄馬、怪我をした正捕手は番 忠太、チームのエースは花形によく似ている。
 この野球をテーマにした2作品も、それぞれの登場人物たちの関わり合いや友情といったものが描かれていて、川崎らしい作品といえるだろう。
 こういった作品も現在気軽に読める状況にないのが大変残念だ。画力、ストーリーテリング共に卓抜した実力を持った作家であるだけに、著名な一部の作品だけではなく、本書のような作品も復刻のチャンスを与えてもらいたい。

本棚の旅■ざんこくベビー/ジョージ秋山

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書 名/ざんこくベビー①
著者名/ジョージ秋山
出版元/秋田書店
判 型/新書判
定 価/250円
シリーズ名/少年チャンピオンコミックス
初版発行日/昭和46年1月5日
収録作品/ざんこくベビー1~12話

 初期のジョージ秋山の代表的なギャグ作品のひとつではあるのだが、少年チャンピオンコミックスからは1巻のみが刊行されただけで、その後他のシリーズ、他社からの再刊行もなく、単行本未収録のエピソードがかなりあるものと思われる。
 基本的なストーリーは、やんちゃ(?)な主人公の赤ん坊が巻き起こすドタバタで、それが大人顔負けのエグい行動であることから「ざんこく」というタイトルがつけられたものと推測される。
「ギギギ」というベビーの不気味な笑い方と「いつか殺してやる」というほとんどの登場人物たちに共通なセリフが、印象に残るが、70年代の世相を反映しているといったら言い過ぎだろうか。同時期には谷岡ヤスジなども活躍していて、極端な暴力や流血というのはギャグ作品ではありふれたものになっていた感がないわけではない。そのうえで「ざんこく」という言葉をタイトルに入れたことで、より過激な描写を要求されることになったのは事実だったのではないだろうか。
 とはいえ、本書カバーの折り返し部分のコメントに「ベビーちゃん一家は、抑圧された現代社会の縮図ではないでしょうか…」とあるように、本作でもジョージ秋山はギャグにペーソスを混ぜて、単に極端な描写による笑いだけを追求しない。
 ジョージ秋山の単行本未刊行作品がシリーズとしてまとめて刊行された際にも本作はラインナップには入っていなかった。初期の代表作のひとつとして、完全版での刊行が望まれる。

本棚の旅■コンピューたん/ジョージ秋山

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書 名/コンピューたん
著者名/ジョージ秋山
出版元/少年画報社
判 型/新書判
定 価/240円
シリーズ名/ヒットコミックス
初版発行日/昭和45年8月15日
収録作品/コンピューたん(全16話収録)

 ジョージ秋山の単行本の中でもレアな部類に入るのが、この『コンピューたん』ではないかと思う。
 主人公はロボットの少年で、そのとぼけた(?)行動に周囲が振り回されるなどして笑いへとつながるのが基本的な内容。印象的なのが、主人公である「コンピューたん」のセリフがテープ出力の文字情報になっている点。コンピューターにモニター画面や音声出力がまだ普及していなかった時代でもあり、マンガだからといって安易に言葉を話させないところはジョージ秋山らしいともいえるだろう。
 開始当初は、コンピュータの正直さが仇となったりして、泥棒の手助けをしてしまったり、その行動や言動による面白さがメインになっているが、しだいにコンピューたんが出会う人間たちの言動から哀愁のある展開を見せたりもする。これは後の『よたろう』などにもつながっていく展開ではないだろうか。
 また「ロボットはつらいよ」というエピソードで、コンピューたんが作る大型ロボットの頭部が『ザ・ムーン』に酷似していることも触れておこう。

 ジョージ秋山は昭和50年代にも『ピコピコロボベエ』というロボットの登場する作品を「冒険王」に連載している。『コンピューたん』がそういった作品の原点になっているのは間違いないだろう。

本棚の旅■ねこまんまのジョージ

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書 名/ねこまんまのジョージ
著者名/ジョージ秋山
出版元/双葉社
判 型/新書判
定 価/350円
シリーズ名/バワァコミックス
初版発行日/昭和50年11月10日
収録作品/涙の連絡船、おふくろさん、喝采、月の法善寺横丁、傷だらけの人生、雪の渡り鳥

 ジョージ秋山が、流行した歌謡曲をモチーフに、やくざ者の主人公「ねこまんまのジョージ」を描いていく作品。基本的にはギャグ作品といえるのだが、はんぱ者の主人公が関わる登場人物たちとの交流に、心の温まる展開やセリフがあり、言ってみれば映画「寅さんシリーズ」のようなもの。主人公の服装も寅さんを意識しているのは明確だろう。
 とはいえ、各話ごとにテーマとなる流行歌を置いたことで、全エピソードを通しての設定は主人公がやくざ者であること以外には縛られていない。強いて言えば一話、二話で主人公の家族が登場するところが連続したストーリーといえるところだろう。三話では主人公自体が登場しない、エピソードに合わせた独立した話しにもなっている(とはいってもその外見は作者をモデルにしているところは同じなので「もうひとりの、ねこまんまのジョージ」と言ってもいいかもしれない)。
 四話以降はぐっとギャグ作品の傾向が強くなっていて、主人公のビジュアルも開始当初に比べギャグ作品のキャラクター的に若干の変更がされているようだ。
 各話ごとに流行歌が設定されてはいるものの、その歌詞に沿ったストーリーということではなく、歌詞の内容のエッセンスを取り出して作者が自由に物語を描いているところから、カバー袖には「ジョージ秋山式日本の歌新解釈篇」とも書かれている。本作前後には落語をモチーフにした『名作落語全集』という作品も描かれている。
 ジョージ秋山作品の復刊や未刊行作品の単行本化などではシリアスな作品ばかりが取り上げられる傾向が強い印象があるが、作者の作風からいえば本作のようなギャグ作品にジャンル分けされるようなものも得意分野であることは事実で、再刊行の機会に恵まれないのは惜しい気がする。

本棚の旅■灰になる少年/ジョージ秋山

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書 名/灰になる少年
著者名/ジョージ秋山
出版元/大都社
判 型/B6判
定 価/450円
シリーズ名/ハードコミックス(5)
初版発行日/昭和50年10月30日
収録作品/灰になる少年

 この作品は、ジョージ秋山流の吸血鬼モノといっていいと思うのだが、巨大ロボットモノの『ザ・ムーン』がそうであるように、この作品も単に吸血鬼をテーマにした、といえないジョージ秋山作品ならではの哀愁がただよう佳作である。
 初出は73年の「週刊少年ジャンプ」で、おぼろげな記憶で、床屋かどこかで初出の一部を読んだような気がする。その後、大都社で単行本が刊行された際、「あ、あの作品だ」と思ったのでたぶんどこかで見ていたのは確かだと思う。
 ひと口に吸血鬼テーマのホラーと言い切れないミステリーやサスペンスが作品全体を覆っていて、主人公の少年が、殺人事件の犯人を父親だと信じ、自分も殺されると思って逃げ回ったり、不気味な怪物に襲われたりと、ストーリーがどこに向かっていくのか予想できないところがあるのは、ジョージ秋山作品の特徴と言っていいかもしれない。
 すでに『銭ゲバ』や『アシュラ』といった社会派作品も手がけた後でもあり、企業の社長である少年の父親が、公害問題で悩んでいたりする描写があったりもして、社会問題や、少年にはわからない社会の現実や大人の世界といったものが描かれている点で、この作品がジョージ秋山の代表的短編作品として知られるようになった要因になっているのではないかと思う。けっこう「トラウマ作品」として本作を挙げる人も多い。
 もっとも同時に、この時期にはギャグ作品、コメディ作品も手がけていて、個人的にはまだジョージ秋山=ギャグ漫画作家というイメージは強かった。
 現在は文庫版や電子書籍で読むことのできる本作ではあるけれど、大都社版のB6サイズが迫力があっていい。ジョージ秋山作品はあまり大判の単行本で刊行される機会がないのだけれど、本作や『ザ・ムーン』など、A5判などで刊行してくれないだろうか。
 

本棚の旅■黒ひげ探偵長/ジョージ秋山

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書 名/黒ひげ探偵長
著者名/ジョージ秋山
出版元/集英社
判 型/新書判
定 価/240円
シリーズ名/ジャンプコミックス
初版発行日/1970年4月30日
収録作品/黒ひげ探偵長 全14話

 初期のジョージ秋山の単行本の中でレアな部類に入る一冊。ジャンプ関連の作品は本書のほかも入手の難しいものがあり、ファンやコレクター泣かせともいえるだろう。
 本作の主人公「黒ひげ」氏は、探偵と漫画家を掛け持ちしているという設定で、漫画家としても人気作家で、締め切りに追われながら探偵として事件を解決する(というか、いつのまにか解決してるという雰囲気でもあるのだけれど)。タイトルにも「探偵長」と付いてしまっているので、ハードボイルドな雰囲気のカットが各話に必ず挿入されたりもするのだけれど、全体としては「漫画家」黒ひげがメインになっているといっていい。
 ビジュアル的に見ても、主人公の黒ひげは、ジョージ秋山本人をモデルにしていると思われるし、単行本の著者近影でお馴染みのサングラス姿も共通していたりする(もっとも、本書のカバー袖に掲載されている著者近影ではサングラスをかけていない、満面の笑みをたたえた珍しい写真を見ることができる。この写真だけでもジョージ秋山マニアは本書を入手するべきかもしれない)。
 基本的にはギャグ作品であり、探偵としてのシリアスなハードボイルドシーンも、ギャグを活かすためのスパイスとなっている。が、後半になるとしだいにペーソスが含まれだし、最終話では、人気漫画家もいずれ飽きられるという自戒のようなエピソードが描かれている。『パットマンX』や『ほらふきドンドン』といった長期連載作品があった一方で、単行本全一巻程度のギャグ作品が多かったジョージ秋山は、案外ギャグだけを描き続けることができなかったのかもしれない。その方向性が『デロリンマン』となり、『よたろう』になっていったのではないだろうか。
 ジャンプコミックスは巻末にタレントや著名人の推薦文が掲載されていたが、本書のそれは「コント55号」の萩本欽一であった。

本棚の旅■電撃ハリキリ娘ピンチー/ジョージ秋山

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書 名/電撃ハリキリ娘ピンチー
著者名/ジョージ秋山
出版元/講談社
判 型/新書判
定 価/350円
シリーズ名/KCコミックス
初版発行日/昭和51年9月30日
収録作品/電撃ハリキリ娘ピンチー

「週刊少年マガジン」に連載された作品で、まだギャグ漫画家としてのイメージが強いころの一作。初期の作品に比べるとコマ運びやセリフのテンポがよく、勢いも感じる。またそれまでの作品やこのあと描かれる『よたろう』と違って、深刻な話題に踏み込まないところも本作の特徴といえるかもしれない。
 主人公はピンチーという少女で、空手が得意な中学生(たぶん)。本名は中村金魚ということになっているが、名前を呼ばれるシーンのほとんどで「ピンチー」と呼ばれるので本名は忘れてしまっても問題ない。
 連載4話目で両親が海外に転勤し、叔父の家にあずけられることになるのだが、その叔父が住職で、お転婆なピンチーをおとなしくさせようと尼にしようと髪を剃ってしまったり、叔父の家に引っ越したことで転校することになり、新しい学校でドタバタがあったりと、「ハリキリ娘」と呼ばれバイタリティー溢れるピンチーを中心にストーリーは展開していく。
『ザ・ムーン』『灰になる少年』さらには『アシュラ』『銭ゲバ』と代表的な作品がことごとくトラウマ作品といってしまっていいジョージ秋山の陽の部分が本作『電撃ハリキリ娘ピンチー』には表れているような気がする。たぶんこの心地よさは『浮浪雲』につながるものなのではないかと思う。個人的にジョージ秋山のぎゃく作品の中でも、本作が気に入っているのはそういう理由なのだと改めて感じる。
 しかしながら本作も現在気軽に入手できる環境になく、またKCコミックスには未収録エピソードもあるようなので、完全版の刊行を願うばかりだ。

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