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作品評

■野獣/横山光輝

■野獣/横山光輝

初出/週刊プレイボーイ[小学館](1970年1月~7月)
書誌/講談社・講談社漫画文庫

 横山光輝のハードボイルド青年「劇画」といっていい作品。連載時の扉絵を見ると、さいとう・たかをなどの劇画作品に影響されたような「目」を意識的に取り入れているようにも見える。もっとも本編そのものは主人公の年齢が少年漫画作品よりはるかに高いということもあってクリクリの目ではないものの、それほど他の横山作品からかけ離れた印象はない。
 この作品はそれまでの横山作品に比べ、青年劇画というジャンルでもありバイオレンスものという新しいテーマにチャレンジしている感はあるわけだが、当時、大藪春彦などバイオレンスハードボイルド小説も人気となっていたので、主人公の性格設定などにはその影響も見受けられる。
 ストーリーは主人公が恩赦により刑期より早く刑務所を出所するところから始まる。主人公は弟と友人の3人で、ある暴力団が密輸ダイヤの取引を行うことを知りそのダイヤを横取り。追求をかわすため傷害事件を起こし刑務所に入っていた。出所してみると弟はダイヤを横取りされた暴力団によって殺されてしまっていたが、友人は追求を逃れ密かに暮らしておりダイヤの隠し場所を知る唯一の人物となっていた。時を見計らってダイヤを金に換えようとするのだが、新たにそのダイヤの存在を知る組織に主人公は狙われることになる。友人の存在も知られ、ついには友人も殺されてダイヤの隠し場所も謎のままになったかに思われたのだが、死んだはずの友人が生きているらしいことがわかり、主人公の命まで狙い始めるのだった…。
 と、まさにハードボイルドバイオレンス小説といっていい内容。もともと主人公が暴力組織に居たとも思えないのだが拳銃やライフルを撃ちまくり冷酷に人を殺していく。タイトルにもある「野獣」的な性格というわけである。
 またこの作品には少年漫画ではほとんど登場してこない女性キャラクターが主人公と行動をともにするという形でほぼ全編に渡って登場している。表現はおとなしいが濡れ場も描かれているのは横山作品としては珍しいかもしれない。このあたりも青年劇画を意識したためだろう。
 70年というと、小学館では「ゴールデンコミックス」などの単行本シリーズがあり、本作品もそこから刊行されてもよかったと思うが、残念なことに2008年刊行の講談社漫画文庫による単行本化までまとめられることがなかった。
 

■コマンドJ/横山光輝

■コマンドJ/横山光輝

初出/講談社「少年マガジン」(昭和40年・34号~昭和41年29号)
書誌/講談社・講談社漫画文庫(全3巻)

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 横山光輝の作品は、氏の没後、講談社から未単行本化作品が相次いで刊行されたが、本作もそんな作品のひとつ。
 秘密特捜隊という、日本のスパイ組織「コマンド」のメンバーのひとりJを主人公にしたスパイアクションで、スピード感のある佳作。しかしながら連載終了以後2005年7月の文庫版収録まで未単行本化だった(なんと40年間も、だ)。その理由のひとつには、全3話からなる本作において、第2話第2回目で突然、主人公が少年から青年に設定変更されていることが考えられる。文庫版第1巻の解説では、連載当時の社会状況として、それまでの少年漫画によく見られた少年主人公が拳銃を撃ちまくったり、ましてやタバコを吸うなどのシーンに対して批判が強くなったことに触れているが、さらに言えばその当時やり玉に挙がった貸本劇画では発禁本なども出てくるほど厳しい状況だったようだ。確かに本作でも明らかに少年として描かれている主人公Jが撃ち合いをするほか喫煙するシーンも描かれていたし、平気でバーに出入りもしている。「漫画だから」といってしまえばそれまでだが、社会状況の変化に応じた変更ということばかりではなく、作品のリアリティという点からも青年への設定変更は正解だったように感じる。ただ、これが未単行本化だったというのは多少疑問が残るところで、たとえば第2話第1回だけでも主人公を描き変えたり、2話3話のみで単行本化することもできたのではないかと思うのだ。それをしなかったのはやはり作品自体に横山光輝自身、なにか単行本としてまとめておきたくないものがあったのかもしれない。もっとも、同時期に同じ「少年マガジン」に連載されていた桑田次郎の『黄色い手袋X』も単行本化されない期間が長かったので、連載作品=単行本化という出版の流れに漏れた時期の作品というだけのことかもしれないが。
 それにしても驚かされるのが、本作でも女性キャラクターが一切登場しないこと。スパイものといえば女スパイのひとりくらい登場してもよさそうなものだが、敵味方双方にひとりとして女性が登場しない。もちろん作品中で違和感を感じるということは無いのだが、読み終わってみて「あれ、女が全然でてこなかった」と唖然としてしまうのだ。他の横山作品では女性キャラクターが登場しないまでも、女のようなルックスのキャラクターが登場したりしていたのだが、本作ではそれもない。ある意味リアリティにこだわった作品だったということもできるかもしれない。
 リアリティという点に関しては、当時のスパイブームを作った映画『007』シリーズやテレビ『ナポレオン・ソロ』などよりも描かれる秘密兵器が現実に則しているという指摘もある。もちろん装着式のロケットを背負って飛んだりするところなどは漫画チックな表現ではあるが、全体として実際にあるものや少し飛躍したものという印象ではある。
 また同時期の横山作品『伊賀の影丸』と比較して、J以外のコマンドメンバーの個性を抑えていると第1巻の解説では考察しているが、『伊賀の影丸』との差別化という意味では作品的な意味に合わせて、同時期に描かれていたことから作者自身が自分の中で区別する意味もあったのではないだろうか。忍者とスパイという表現的には似てしまう要素の強い2作品であるだけに、そのあたりは意識して差別化していたのではないかと推測する。その意味でも本作が単行本としてまとめられ改めて読むことができるようになったことで、読者も比較して楽しめるだろう。

本棚の旅■夜光島魔人/横山光輝

本棚の旅■夜光島魔人/横山光輝

書 名/夜光島魔人
著者名/横山光輝
出版元/講談社
判 型/文庫版
定 価/680円
シリーズ名/講談社漫画文庫
初版発行日/2007年9月12日
収録作品/夜光島魔人(「たのしい四年生」1960年4月号~1961年3月号)
     13番惑星(「別冊少年サンデー」1962年1月号)
     黒い沼地(「別冊少年サンデー」1960年10月号)
     死の館(「りぼん」1966年3月号)

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 映画を観た帰りに海岸を散歩していた山形 武と三郎の兄弟は、叫び声を聞いて駆けつけるとそこには男が倒れていて、「夜光島」と言い残して息絶える。また海上にアカエイのようなものが飛んでいるのを見る。事件を警察に通報したあと帰宅した兄弟は見たものを確認するため、アカエイを撮影した赤外線カメラのフィルムを現像してみるが、そこには確かにアカエイが写っており、改めて兄弟は警察にそのことを報告。しかし担当の刑事が来るのを待っているときに、兄弟の家はアカエイに襲われフィルムは奪われてしまうのだった。
 そしてふたりは刑事と共に「夜光島」探索をはじめるのだったが、「夜光島」を基地にするアカエイとそれを操る組織の手によって捕らえられ、島の地下工場で働かされることになってしまうのだった。
 そしてタイトルで「夜光島魔人」とされた夜光島で謎の組織を動かすリーダーの正体は? 正直謎めいた形にしすぎたせいかあやふやな印象になってしまったのが残念だが、このアイデアは発表年を考えるとなかなか斬新だったように思う。むしろこのリーダーの謎についてもう少し突っ込んだ展開があってもよかったように思うが、それには発表媒体である「たのしい四年生」という雑誌では難しかったのだろう。
 横山光輝は手塚治虫や藤子不二雄らと共に日本の漫画文化を築いた巨匠のひとりだが、同時代に活躍した漫画家たちに比べて未単行本化作品が多い印象がある。逆に言えば『バビル2世』『鉄人28号』『伊賀の影丸』等一部の作品だけが形を変えて刊行され続けていただけかもしれない。本書の表題作である『夜光島魔人』も、初単行本化と記されてはいないが少なくとも数十年間気軽に読むことのできない状態だったのは確かである。
 併録された『13番惑星』は、何度も調査団が行方不明になるという謎の惑星だったが、新たな調査隊が着陸してみると美しい花が咲き誇る地球人の移住にも適した惑星に見えた。しかし前調査団をはじめ動物の姿が見えず、その謎を解明するべく調査を開始したのだが…。この作品も発表年を考えるとなかなか斬新で、まさにSFと呼べる作品だ。『黒い沼地』は西部劇。荒れた土地を買い取りたいと現れた拳銃の名手の目的は? 『死の館』は明記されていないが「アッシャー家の崩壊」のコミカライズ。
 それにしても改めて感じるのは横山が女性キャラクターを描かないこと。本書収録の作品のうち女性キャラクターが登場するのは『死の館』くらいのもの。『魔法使いサリー』など少女漫画でも代表作を残しているハズなのに、少年漫画、青年漫画では印象に残る女性キャラクターをほとんど描かなかったのは有名とも言える。結果的に魅力的な女性キャラクターを描かなかったことが単行本化作品を少なくしてしまった理由なのかもしれない。

本棚の旅■マーズ/横山光輝

本棚の旅■マーズ/横山光輝

書 名/マーズ(全5巻)
著者名/横山光輝
出版元/秋田書店
判 型/新書判
定 価/各350円
シリーズ名/チャンピオンコミックス
初版発行日/第1巻・昭和51年8月10日、第2巻・12月30日、第3巻・昭和52年2月25日、第4巻・3月25日、第5巻・4月30日
収録作品/マーズ

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 本書は『マーズ』の最初の単行本で、その後「秋田コミックセレクト(B6版)」「愛蔵版(四六版ハードカバー)」「秋田漫画文庫」などで再刊されている。また本作を原作としたテレビアニメ(『六神合体ゴッドマーズ』)もあるが、はっきり言って別物である。
『バビル2世』のあと横山は「少年チャンピオン」で学園ものの『あばれ天童』を連載するが、その後またSF作品である本作の連載をスタートしている。単行本カバーの袖部分で作者がコメントしているように「もうSFは描くまいと思い」ながらもSF以外の作品を描いているとSFが描きたくなったのかもしれない。
 本作のアイデアの元は昭和46年の『サンダー大王』にあるという。確かに自分がかなわないときは体内の水爆を爆発させて相手を倒すようにプログラミングされていたサンダー大王と、地球人類の進化の度合いを判断して地球を消してしまうガイアーは共通したものがあるだろう。
 横山の作品はドライでシビアでたびたび救いの無いエピソードが描かれるが、本作はその代表的な一作といえるかもしれない。なんといっても人類の存在を否定しているのであるからどうやっても救われることはない。ストーリーの前半では、過去の歴史はどうあれ、進歩の過程で過ちを認め二度と繰り返さない知恵が人類にはあるのだとヒューマニズムをにじませる展開も見られるのだが、結局は人類は戦争や争いを避けることのできない生き物であるという結論に向かっていってしまう。戦場では人を殺しても家にもどればいい父親であり夫であるような二面性が人類にはあるのだ、というセリフも出てくるのだが、その結論は、宇宙に進出しても人類は侵略や戦争を繰り返すだろうということになってしまう。
 これは横山の考え方もあるだろうが、連載当時の社会状況がネガティブな方向にあったといってもいいかもしれない。ちょうど「ノストラダムスの大予言」などが流行して終末イメージも広まっていた時期でもある。とはいえここまで突き放したドライな作品は横山作品でも珍しい。ことにラストの衝撃は異色ですらある。たぶん連載開始当初から(あるいはアイデア段階から)作者の頭の中にはこのラストシーンが出来上がっていただろうし、本作はこのラストでなければならない。
 作品のイメージとしては、リモコンなどを用いず少年の命令によって巨大ロボットが動くという点で『バビル2世』に似た印象もある。本作では超能力というほどではないにしても通常の人間とはかけ離れた体力と運動神経が主人公にはある。またマーズを襲う6体の神像は操縦者が乗り込むタイプであるが、ガイアーはマーズが乗り込んで操縦することはない。このあたりも『バビル2世』の印象に近いように感じてしまう。結果的に本作以後「少年チャンピオン」で『バビル2世』の続編『その名は101』を描くことになるのは少年を主人公にしたSFものが『バビル2世』的になってしまうことからストレートに『バビル2世』を描いたということだったようにも思えてしまうのだ。
 マーズをはじめ、マーズと敵対することになる六体の神像の操縦者たちも地球の人類ではない。まだ地球人の文明が発達する以前、地球を訪れた宇宙人が地球人の持つ残忍さや闘争心を畏れ、その文明が宇宙に進出するとき、地球を人類ごと消し去るためにセットした人工生命体という設定である。つまり最初から人類を滅亡させるためにセットされた時限爆弾といっていい。しかしマーズは海底火山の爆発により予定より100年早く目覚めてしまい、本来の使命も忘れてしまっている。通常であればここから人類は本当に滅亡させるべきなのか、人類にもまだ希望があるという展開となりラストになりがちだ。実際物語の当所はそのように進んでいく。この作品のラストを否定するつもりは毛頭無いのだが、マーズがもう少し宇宙の中での人類ということに葛藤してもよかったのではないかという気はする。そのような展開にならなかったのは、やはり横山作品に女性キャラの比重が低いことがからんでいるように思う。本作では春美という、マーズが身を寄せる医師の家の娘が登場し、マーズと交流も持つのだが、もうひとつその先まで踏み込むことは無い。ここで恋愛感情だのを持ち出しても陳腐かもしれないが、そのような展開こそがマーズが葛藤する要素にはなったはずだ。同じように人類が絶滅してしまう展開で名作となった、永井 豪の『デビルマン』と、ラストの衝撃でカルト的な人気の本作の違いがそのあたりにあるような気がしている。

■バビル2世/横山光輝

■バビル2世/横山光輝

初出:少年チャンピオン
書誌:少年チャンピオンコミックス/全12巻
   秋田コミック セレクト/全8巻
   秋田文庫/全8巻
   愛蔵版/全8巻
   秋田トップコミックス(コンビニ向け)/全14巻

 アニメ化もされた、横山光輝の代表作のひとつ。
 古代、地球にやって来た宇宙人は、宇宙船が故障して帰ることができなくなり、時の権力者を利用して「バベルの塔」を建造させ、宇宙に信号を送るつもりだったが、建設途中に事故があり、塔は崩壊。地球人として暮らすことを余儀なくされる。
 宇宙船のコンピュータを初めとした超科学の遺産を、自分と同じ能力を有した子孫に与えるよう、コンピュータにプログラムしてこの世を去る。
 時を隔て、主人公・浩一にその能力が目覚め「バビル2世」として、同じ能力を持つヨミと戦うことになるのだった。
 なんにでも変形可能な「ロデム」、巨鳥ロボット「ロプロス」、巨大ロボット「ポセイドン」の3つのしもべを従えて、果てしない戦いが始まる。

 超能力が巷でブームになる直前に描かれた作品としても知られる本作は、アニメ版の主題歌で「サイコキネシス」「テレパシー」といったESP用語を広めた功績もあるだろう。

 当初刊行された「チャンピオンコミックス」版では、完結エピソードが収録されないままになっていたが、「コミック セレクト」版で初収録。後を追うように、10巻刊行から数年の間を置いて11巻が刊行された。

『その名は101』は、『バビル2世』の続編。

本棚の旅■ジャイアント・ロボ/横山光輝

本棚の旅■ジャイアント・ロボ/横山光輝

書 名/ジャイアント・ロボ(全3巻)
著者名/横山光輝
出版元/講談社
判 型/四六判
定 価/1、2巻・1700円、3巻・1600円
シリーズ名/なし
初版発行日/第1巻2005年2月23日、第2巻2005年3月23日、第3巻2005年4月22日
収録作品/第1巻 ジャイアント・ロボ第一部、第2巻 ジャイアント・ロボ第二部 第三部、第3巻 資料編(学年誌等に掲載された光プロによるテレビドラマのコミカライズ作品と当時のアシスタント、テレビドラマ、アニメスタッフなどのインタビューや評論)

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『ジャイアント・ロボ』は東映制作の特撮テレビドラマとしても高名な作品だが、その原作コミックについてはさまざまな理由から単行本化されないままになっていた、いわば横山の「幻の代表作」だ。本単行本はさまざまな条件をクリアして40年を経て公式に刊行されたものになる。
 原作コミックである本作は、ほぼテレビドラマの放送時期と重なる期間「少年サンデー」に連載されたので、当時雑誌で漫画を読んでいた世代にとっては原作コミックの印象もあるだろうが、たいていは「ジャイアント・ロボ」といえば特撮ドラマを思い浮かべるだろう。その独特な造形(これはもちろん原作コミックも同じだが)、命令を遂行するときの音声、そしてロボを操る大作少年と印象の強い番組であったことは事実だ。さらにいえば原作コミックが連載終了後単行本化されなかったのと違い、テレビドラマは何度も再放送されソフト化もされたのでファンを始め多くの人の目に触れる機会も多かった。
 原作コミックは「少年サンデー」昭和42年20号~43年10号に連載され、当初は横山光輝と小沢さとるが作者として併記されていた。これは『仮面の忍者赤影』のほか数作品を同時に連載していた横山が、メカ作画につよい小沢が参加するということを条件に連載をスタートさせたことによる。しかし小沢も『サブマリン707』などの作品を同時に手がけており途中降板。以降は「横山光輝・光プロ作品」と表記されるようになる。またこの複雑な制作状況が版権にも影響を与えて単行本化ができなかったという噂も漫画マニアの間では流れていた。もっとも本単行本自体、第一部は印刷物を修正して復刻していて、原画が紛失してしまっていたということも単行本化できなかった事情のひとつではあるようだ。
 原作コミック『ジャイアント・ロボ』のストーリーは、世界征服を企てるビックファイアという組織が作っていた「GR」という超兵器の秘密工場に、国連特別捜査機構のエージェントと勘違いされて一旅行者だった草間大作が捕らわれ監禁され、工場の爆発によってなんとか脱出することができるのだが、そのときロボの操縦に必要な声の登録を知らずにしてしまい、ジャイアント・ロボの操縦者となる、というスパイコミック的な展開から始まる。当時は『コマンドJ』などのスパイ物も手がけたあとでもあり、映画「007シリーズ」の影響が漫画の世界にも浸透していたと指摘するものもある(またロボ奪還のために大作の暗殺を企てるあたりもスパイ物的な展開だ)。
 ビッグファイアは奪われたロボを奪還しようとGR2(水中戦用ロボ)、GR3(空中戦用ロボ)を使って大作と国連特別捜査機構を襲う。したがって、特撮テレビドラマのように毎回違う怪獣やロボットが大作やジャイアント・ロボに向かってくるのではなく、GR同士の戦いが描かれるのである。
 横山のロボット作品といえば『鉄人28号』だが、鉄人は映画『フランケンシュタイン』に影響を受けて発想されたということだ。『ジャイアント・ロボ』は鉄人連載終了の翌年に連載スタートしており、鉄人を超えるロボット物という意欲もあったと思うが、やはり横山ロボットのルーツは鉄人と思えるシーンが登場する。それはロボの起動シーンだ。ロボに搭載された新しい原子力エンジンを起動させるために膨大な電気エネルギーが必要で、そのために落雷を利用するのだが、雷の電気エネルギーによって目を覚ます人造人間といえばやはりフランケンシュタインの怪物だろう。ここで鉄人とジャイアント・ロボが同じ作者によって発案された兄弟という印象が強くなる。
 テレビドラマでは腕時計型の送信機でロボに命令を与えるのが印象的だったが、原作コミックでは当初直接ロボに呼びかける形になっていて、半ばテレパシーのような趣もあった(このあたりは鉄人からバビル2世につながっていく)。しかしテレビに合わせて腕時計型送信機も登場し、陸戦用であったGR1に飛行用のロケットも装備される(第三部)。また当初は青年といった雰囲気だった大作も途中から少年に描き変えられている。テレビドラマとの相違点としてもうひとつ忘れてはならないのがビッグファイアの首領である。テレビドラマでは宇宙からの侵略者ギロチン帝王が登場するが、原作コミックではその正体は謎のままで、どうやら地球の人間らしい。
 最後に私事ではあるが、本作品の単行本化を待ち望みながらそれを見ることなく他界した親友にこの単行本を手にして欲しかった。実に残念である。

本棚の旅■サンダー大王/横山光輝

本棚の旅■サンダー大王/横山光輝

書 名/サンダー大王(全3巻)
著者名/横山光輝
出版元/秋田書店
判 型/新書判
定 価/各370円
シリーズ名/秋田サンデーコミックス
初版発行日/第1~3巻ともに昭和63年8月15日
収録作品/サンダー大王

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 本作は昭和46年に秋田書店の「冒険王」に連載されたもの。作者自身のコメントによればその後の『バビル2世』『マーズ』といった作品に発展するアイデアを含んだ作品ということだ。確かに読んでみるとアトランティス大陸の神像であるサンダー大王が現代に蘇り少年の命令によって活躍するというのは『バビル2世』につながるし、もしサンダー大王が適わないような敵が現れた場合、体内の水爆が爆発するようにプログラミングされているというのは『マーズ』に通じるものだろう。またサンダー大王の操縦が「黄金のかぶとむし」を使って行われるのは『鉄人28号』からのリモコンロボットの流れとも言える。
 主人公の少年は、当初アトランティスから持ち出されてしまったサンダー大王を取り戻そうと後を追ってきたわけだが、途中からはアトランティスに連れ帰るのではなく、他の誰にも知られることの無い場所に隠そうと、協力者のスティンガー大佐とともに世界を放浪することになる。
 サンダー大王の力を知り、手に入れようとする国や犯罪組織がサンダー大王にも匹敵する力を持ったロボットを送り込んでくるのだが…それだけのロボットが作れているのなら、サンダー大王は必要ないんじゃないかという気もしてしまうけどね。
 サンダー大王はその能力をみてもすばらしいものなのは確かだが、同時にサンダー大王を操る主人公のシンゴ少年も、アトランティスのただひとりの生き残りという貴重な存在。しかしながらそのことに関してはほとんどスルーというのが本作が目指していたものを端的に現しているような気がする。というのは設定はいろいろあるが、とにかくロボット同士の格闘がメインということである。『鉄人28号』と違って高熱で触れたものを焼き切るという剣などの武器を持っていることもあって、その対決シーンはなかなか迫力のある場面が連続している。またそんなサンダー大王に対して、挑戦してくるロボットたちもそれぞれに特徴のある能力を備えているので、どう闘うかという興味もわく。
 最初にも触れたが本作がのちに描かれた作品のアイデアの元になっているのは読んでみればすぐにわかる。本作が連載終了後から17年も単行本化されなかったのはそのあたりに理由がありそうな気がする。
 

■宇宙警備隊/横山光輝

■宇宙警備隊/横山光輝

初出/少年サンデー(1961年39号~1962年15号)
書誌/アップルBOXクリエート・横山光輝名作集19、20(全2巻)

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 本作品は横山の代表作のひとつ『伊賀の影丸』の第一話と第二話との間に「少年サンデー」に連載された。もともと『伊賀の影丸』連載開始にあたって、忍者ものの次に宇宙SFモノをという編集長の意向があり、それを条件に『伊賀の影丸』がスタートしたという経緯があったようだ。本作も横山ならではのSF作品で、本来ならもっと長期の連載も可能だったと思われるが『伊賀の影丸』が予想以上の人気となり第二話の要望が大きかったために比較的短期に連載が終了したと見られる。
 本作は二話からなっており、第一話「宇宙ギャング」、第二話「最期の日」とサブタイトルがつけられている。第一話は『宇宙船レッドシャーク』のような宇宙ロケットとパイロットが活躍するSFアクションといった印象だが、第二話は一転して太陽の活動の活発化で地上の生物が絶滅するという話しになる。主人公は密かに選抜された地球脱出組の人々の護衛に付くという展開だ。限られた人員しか脱出できない状況の中で選抜される人々ということにはこの際触れずに、地上の生物の最期を描いていくというストーリーは、のちの『マーズ』にもイメージはつながる。主人公を含めた護衛部隊も脱出組とは無縁の自己犠牲を前提とした活躍であるところも横山らしい設定だろう。
 タイトルである「宇宙警備隊」だが、横山はこの作品が連載された1961年、『時間警備隊(タイムパトロール)』という作品を発表している。宇宙を守る組織を描くということで「警備隊」をそのまま流用したのかもしれない。
 また「書誌」にはアップルBOXクリエートから刊行された版を記載したが、これは自費出版(同人誌)の範疇であり、公式な単行本は現在までのところまだ刊行されていない。

※現在、小学館クリエイティブから単行本が刊行されている。

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■レッドマスク/横山光輝

■レッドマスク/横山光輝

初出/講談社・おもしろブック(1958年~1960年)
書誌/中村書店・横山光輝全集(刊行巻数未確認)
   アップルBOXクリエート(全5巻)

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 奄美大島から転校してきた秋庭五郎という少年は、成績優秀の上に運動神経もずば抜けていい。五郎が転校してきたころ、ギャングの逮捕に協力する謎の空飛ぶ超人が新聞で報じられた。赤いマスクをつけいてることから自らレッドマスクと名乗るその超人こそ、五郎だったのだ。
 実は五郎の父はX星という惑星の生き残りであり、地球人の女性との間に生まれたのが五郎であった。ちなみにアメリカで活躍する「スーパーマン」も五郎の父と同じX星人だという。
 空を飛び超人的な力を発揮し弾丸も受け付けない身体であるレッドマスク・五郎だが、かかとだけが弱点であった。そのため五郎の父も同じマスクをつけて五郎を手助けするようになっていく。
 物語は「スペード団の巻」「透明人間の巻」の2話からなっているが、それぞれのエピソードの中でも五郎がプロ野球の球団にスカウトされて試合に出たり(「スペード団の巻」)、敵である透明人間が途中で殺され闘う相手が変わるなどなかなか複雑な展開を見せている。
 また本作は「スーパーマン」に言及シーンがあることから単行本化できないという噂もあったのだが、言及シーン自体1ページ強であり、その気になればいくらでも描き変えできるシーンであり、作品のストーリーに影響はない。さらに中村書店で刊行されている事実もあるので、別の理由で再刊行されなかったと考えるべきだろう。
『宇宙船レッドシャーク』そしてこの『レッドマスク』と横山の代表作としてプロフィールなどでたびたび作品名があげられていながら気楽に読めない状況が続いていたのは、作者自身に単行本化をためらう理由があったのではないだろうか。共に「レッド」が付くのも奇妙な感じだ。
 中村書店版そしてアップルBOXクリエート版と共に現在では入手の難しい本作なので、ぜひ復刻および再刊行してほしい作品である。

※現在は小学館クリエイティブから単行本が刊行されている。

■宇宙船レッドシャーク/横山光輝

■宇宙船レッドシャーク/横山光輝

初出/集英社「少年ブック」(1965年4月号~1967年3月号)
書誌/講談社・講談社漫画文庫(上下巻)

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 本作は横山光輝の代表作としてプロフィールにもたびたび記載されていたにもかかわらず連載終了後、2005年2月の講談社文庫で刊行されるまで単行本化されなかった作品。同じ時期に「少年マガジン」に連載されていた『コマンドJ』も同じように単行本化されていなかったことを考えると昭和40年(1965年)前後は連載=単行本化という出版の流れができる以前で、単行本化されないままになっている作品が多いのかもしれない。もちろん本作が横山の代表作として知られている点などを考えると、連載終了後にも単行本化のオファーはあったはずなので、何らかの事情で作者自身が単行本化を拒んでいたとも考えられる(『コマンドJ』などはそのあたりの事情がありそうだが)。
 
 本作は「疫病神ジャック」「ガニメド」「マロー星探検隊」「反乱」「宇宙からの帰還者」の5話からなっている。主人公は一色健二という養成学校を卒業したばかりのパイロットの卵で、一流の宇宙パイロットに成長していく物語といえる。もっともそのような内容をストレートに描いているのは第1話であり、第2話以降は歳は若いが優秀なパイロットとして隊長という立場で活躍していく。
 横山作品は時に非情な展開を見せることがあるのだが、本作ではそれが全般的に見られるように感じた。もちろんヒューマニズムに基づくギリギリの判断という展開であることが多いわけだが、連載当時の対象読者層を考えるとそうとうにシビアで、もしかするとトラウマになるような展開だったかもしれない。その代表的なエピソードが第1話であり、個人的にはこれが本作の中でももっともよくできていると思える。
 また、単にロケットで宇宙を冒険するというだけでは読者に飽きられると考えたのか、第4話ではスパイ物的な要素が見られたり、第5話では宇宙怪獣が登場したりもしている。もっとも連載当時を考えてみるとスパイブーム、怪獣ブームという社会状況があったことも影響しているのだろう。
 ちなみにタイトルでもある「レッドシャーク」は健二が乗るロケットの名前。さまざまなミッションを与えられる健二であり、そのつど要求される内容も違うので、本来であれば乗るロケットはミッションに合わせて変わってもよさそうなものだが、タイトルにしてしまったこともあり、常にレッドシャークに搭乗することになる。とはいえ、今であればロケットそのものに装備などで個性をもたせるだろうが、本作では単なる乗り物として扱われ、セリフの中でもあまり「レッドシャーク」という単語が出てこなかったりする。『鉄人28号』その他のロボット物で、主人公とメカとのつながりを描いていたことも考えると、レッドシャークに対する健二の愛着がほとんど描かれていないのはちょっと意外な気もする。

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